フィットネス
2023年5月15日

腕立て伏せ(プッシュアップ)、もっとも効果的なフォームは?毎日やるべき?

 腕立て伏せ(プッシュアップ)は、自重を使って上半身を鍛える筋トレのひとつです。腕や肩の筋肉を鍛えるイメージが強いかもしれませんが、体幹やインナーマッスルを鍛える効果もあります。さらには心血管の健康にもメリットがあるということが、いくつかの研究で明らかになりました(注1)

 今回は腕立て伏せの効果とメリットや、フォームの種類と鍛えられる部位、トレーニングのコツをトレーナーが紹介します。

腕立て伏せがもたらす健康効果とは

 筋トレには心血管疾患リスクを低下させることが、いくつかの研究で証明されています。

 そのひとつとして、腕立て伏せができる回数と心血間健康の関連について、ハーバード大学が中心となり大規模かつ長期的な研究が行われました(注1)。合計1104人の健康な中年男性を被験者として、腕立て伏せが可能な回数と10年後の健康リスクを解析したものです。

 研究によれば、40回以上の腕立て伏せを行うことができる男性は、10回以下しかできない男性に比べて心血間疾患リスクが96%低くなることがわかりました。

腕立て伏せは毎日やってもいい?

 腕立て伏せは自宅で簡単にでき、筋力強化やボディメイクに効果的な自重トレーニングです。やろうと思えば毎日取り組むことができるでしょう。しかしやり過ぎは禁物です。「○○日チャレンジ」と称して、腕立て伏せの回数を毎日増やしていくプログラムを目にすることもあります。

 企画としてはおもしろいのですが、毎日腕立て伏せを続けていくと、必ず飽きてしまい、停滞期がやってくるものです。こなせる回数とかかる時間だけが長くなっていき、肝心の筋肉への負荷は少なくなってしまいます。筋肥大どころか、手首や肘などの関節に慢性疲労が溜まり、身体の故障を招くおそれもあるでしょう。

 腕立て伏せだけに限ったことではありませんが、ひとつの同じ動作を毎日繰り返すことは、あまりよい結果をもたらしません。腕立て伏せを行うのは隔日程度に留めて、他のエクササイズと組み合わせることをおすすめします。

二の腕に効く腕立て伏せのフォームはどれ?種類別に効果を比較

 2015年に発表された研究(注2)では、8人の男性に以下の腕立て伏せを行ってもらい、それぞれのフォームがどの筋肉群に影響するか調べました。

ノーマルプッシュアップ

 両手を肩幅の広さに置き、肘を伸ばした体勢のまま、まっすぐに上体を下ろします。これは、もっとも基本的な腕立て伏せの姿勢です。

 頭・背中・お尻・つま先まで1本の棒になったような意識で、一直線にキープしましょう。

 その後、胸が地面につくまで下げてください。腰を曲げないように注意しましょう。

動画でやり方をチェック!

ワイドプッシュアップ

 両手の幅をスタンダードの2倍にします。

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ナロープッシュアップ

 両手を胸中央の真下で合わせます。親指と人差し指を接触させ、三角形を作りましょう。「ダイヤモンド・プッシュアップ」と呼ばれることもあります。

動画でやり方をチェック!

フォワードプッシュアップ

 両手の幅はスタンダードのままですが、位置を肩の20センチほど前方に置きます。

動画でやり方をチェック!

バックワードプッシュアップ

 両手の幅はスタンダードのままですが、位置を肩の20センチほど後方に置きます。

動画でやり方をチェック!

フォームごとにどんな効果の差が見られたか

 研究の結果は以下の通りです。

上腕三頭筋および大胸筋への効果が大きい

ナロープッシュアップ

体幹部分(腹筋および背筋)への効果が大きい

フォワードプッシュアップ
バックワードプッシュアップ

もっとも多くの筋肉群を刺激する

バックワードプッシュアップ

 この結果から、筋トレ効果を最大化させるためにはバックワードプッシュアップ、上腕三頭筋および大胸筋を肥大させることに目的を限定するならば、ナロープッシュアップがもっとも適しているとしています。

 注意点は、上記バリエーションはすべてノーマルプッシュアップをマスターした人に効くということ。正しいフォームでこなせないうちに他のバリエーションを試しても、効果は望めません。

 スタンダードプッシュアップの腕立て伏せができない人は、以下記事や動画を参考に取り組んでみてください。

関連記事:「腕立て伏せ(プッシュアップ)」のレベル別トレーニング。初心者は正しいフォーム練習から

\市民アスリートMIHOが動画で解説/

 目安として、スタンダードプッシュアップの腕立て伏せを、正しいフォームで10回以上連続して行えるようになったら、他のバリエーションに挑んでみてください。

参考文献
(注1)Association Between Push-up Exercise Capacity and Future Cardiovascular Events Among Active Adult Men.
Yang J. et al. 2019

(注2)Selective Activation of Shoulder, Trunk, and Arm Muscles: A Comparative Analysis of Different Push-Up Variants.
Marcolin G. et al. 2015

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text & Photo:角谷剛>