2019年12月26日

[特別レポート]新国立競技場のトラックを見て決意したこと。│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for 2020~」#33

 みなさん、こんにちは!陸上競技の寺田明日香と申します!

 あっという間に年末になり、いよいよ2020年が幕を開けようとしています。みなさんの2019年はどんな年だったでしょうか?

 私の2019年は、陸上選手として再出発し、1日1日が本当に短く感じるような、怒涛の忙しさだったように思います(うれしいことです!)。

 さて、1年の振り返りをするなかではありますが、今回の記事は、なんと。新国立競技場のメディア向け内覧会に、MELOS編集部さんからお声がけをいただき、ワタクシ寺田明日香が潜入してきたときのことをレポートしたいと思います!

 最後まで、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

「TOKYO」から6年

 2013年9月、東京でのオリンピック・パラリンピック開催決定を告げるコールを受けたとき、日本中が歓喜にわきました。当時の私は第一次陸上選手期の引退直後で、「私が出られることはないんだな」と、少し寂しい気持ちになりながらも、自国で開催されるオリンピックにワクワクしていたことを覚えています。

 あれから、はや6年の月日が流れ、2020年東京オリンピック開幕はあと約半年強というところに迫って来ました。

 競技会場となる場所はほとんどが完成し、テスト大会として競技会が開かれている場所もあるなか、1964年東京オリンピックの象徴であった国立競技場も姿を変え、2020年東京オリンピックのレガシーとなるべく戻って来ました。

 私が旧国立競技場を訪れたのは実は小学5年、6年の全国大会の時の2度しかありません。その記憶を蘇らせながら、千駄ヶ谷駅から国立競技場方面に歩いていくと、3階層でところどころに緑が見える新しい国立競技場が見えて来ます。
 MELOS編集部と合流し受付を済ませると、「A」と書かれたシールを渡されました。多くのメディアが集まっていたため、3つにグループ分けをしてスタジアムツアーが行われました。

 敷地内に入ると、綺麗に整備された広場が広がっています。競技場に沿って歩いていくと、旧国立競技場メインスタンドにあった壁画が飾られていました。

 旧国立競技場は、メインゲートである千駄ヶ谷門をくぐると競技場に向かって上り坂になっていて、その両端に古代オリンピックの選手たちを模したモニュメントがありましたが、新国立競技場にはありません。でも、この壁画があることで、旧国立競技場の面影を感じることができます。私も、「たしかにあったかも」と、うっすらと残る記憶を頼りに旧国立に思いを馳せました。

まずは観客席へ

 私たちAグループ一行は、客席階層の4階へと進みます。4階に上がると、最近写真でよく見る場所に着きました。ここから眺めると、とても広く感じました!

 天井から伸びる多くの梁には、カラマツとスギが取り付けられていて、鉄骨部分が目立たないようになっています。

 座席は、5色に塗られていて、ランダムに配置されているように見えるのですが、すべて計算されて配置されているのだとか。下の方は赤茶色の座席が多く、中間は緑、上に向かって白が多くなっていきます。

 これは地面から空に向かっていく自然の色を表しているそうです。この座席の色の工夫、メディア内覧会では観客は誰もいないはずなのに、大勢の観客で埋まっているように見えるんです。すごい工夫です!

 3階に降りると、客席につながるコンコースを歩くことができました。売店が入るであろう部分や、風が通るように設置された「風のテラス」、謎の(?)休憩室などがありました。売店は、プロ野球の球場のようにたくさんの売店が入るスペースはなく、数店舗しか入らないように見えました。となると、観戦時の飲食の問題は少し懸念材料かもしれません。

 また、3階コンコース部分は風が通り、日陰が多いため、夏の暑い日は3階コンコースあたりに避難する人が多くなりそうな気がします。

いよいよフィールドへ

 客席部分の散歩を終え、いよいよフィールドレベルに下がります。さすがにここでは、私を含めメディアの方々もテンションが一段と上がっているようでした。

 フィールドに立つと、まず観客席とトラックの距離の近さを感じました。1階席最前列と9レーンは目線もほぼ同じで、海外のスタジアムと似ています。真新しいトラックは、上から指で押すと少しだけ凹んでポンっとすぐに返ってくるような、反発性が高いものでした。

 日も落ちてきていたため、空気がキーンと冷えていましたが、風はあまり感じませんでした。陸上選手にとっては“あるある”だった旧国立競技場の「いつも向かう(向かい風)」という印象はなくなっていたように思います。

 50m付近のスタンド下にある大きな部屋は、メディアの取材場所になる「ミックスゾーン」になるそうで、その部屋の左右には記者会見ルームも完備されていました。今回の内覧会で、唯一この部屋だけがエアコンが入っていて、とても暖かかったんです。

 サッカーやラグビーでは、この部屋から選手が入場することになるので、ラグビー選手に戻った気持ちになりながら、部屋の出口からグラウンド出てみたことは私のなかにとどめておきます。

 今回のメディア内覧会は多くの報道陣で賑わっていましたが、現役のアスリートで参加していたのは、恐らく私だけだったのではないかと思います。貴重な機会を与えてくれたMELOS編集部のみなさんには感謝しかありません。でも、やっぱりここには選手として立ち、走り、笑顔で取材を受けたいなと思いました。

 東京オリンピックまであと半年。取材側ではなく選手として、また国立競技場に戻ろうとひそかに誓ったのでした。

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後のスケジュール】
2020年2月1日(土) 2020日本室内陸上競技大阪大会@大阪城ホール ▶詳しくはこちら
2020年3月1日(日) スポーツポテンシャル測定会@東京都板橋区
2020年4月29日(水)第54回織田幹雄記念国際陸上競技大会
2020年5月10日(日)セイコーゴールデングランプリ陸上 2020 東京
2020年6月25日(木)~28日(日)第104回 日本陸上競技選手権大会


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<Text:寺田明日香/Edit:アート・サプライ/Photo:編集部>