インタビュー
2019年9月21日

大迫傑が語る、MGCとその後 (1/3)

 9月15日に開催された、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)。東京2020オリンピックのマラソン日本代表選考を兼ねた大きな大会でしたが、そこで優勝候補として注目されていたのが日本記録保持者の大迫傑選手(Nike)。中村匠吾選手(富士通)、服部勇馬選手(トヨタ自動車)に続き、惜しくも3位でフィニッシュし、代表内定とはなりませんでした。都内では、大迫選手が所属するNikeによるメディア向けグループインタビューが実施され、レースの振り返りや今後について語ってくれました。(取材日:9月17日)

良くも悪くも、ボクを中心にレースが動いていった

―― レース後の疲労感は。

ほかのレースと同じようにあります。

―― レースは思い描いていたプラン通りでしたか。

暑くなることは予想していたので、できる限りの対策は取っていました。準備していた通りでした。

―― 暑さ対策について。

トレーニング内容に関しては詳しいことは言えませんが、見ていただいた通り、穴が空いたシャツを着たりだとか、しっかり氷を取る、そういう基本的なことですかね。

―― 氷は頭に当てていたのでしょうか。

そうですね。イチバン、キープしやすいところだったので。

―― けっこう涼しく感じるものですか?

氷自体は、だいぶ助けになった気がします。あとはスポンジだったり。わりと頻繁に置いてあったので、なるべく取るようにしていました。

―― 練習のときから氷を使うものなんでしょうか。

それはないですね。

―― 暑さはいままでのマラソンと違うものでしたか。

みんなそうですが、走っているときは一生懸命なので、今日は特に暑くてきついな、っていう気持ちはなかったですね。結果的に最後、疲れ果てたりということはありますが、走っているときに今日は暑いな、と思うことはないです。

―― レース展開を、いくつか想定していたと思います。想定内でしたか。

そうですね。設楽(悠太)選手かどうかは分からなかったですけど、誰かしら出る可能性があると思っていましたし、1人で出た場合、可能性としてはもちろん最後まで行き切ることもありますが、ペースが落ちてくる可能性の方が大きいかなと思っていたので、ああいう対応をとりました。

―― いつもは後ろの方で様子を伺うことも多いと思うのですが、今回は集団の中で、誰かが出たらついていくという考えだったのでしょうか。

良くも悪くも、ボクを中心にレースが動いていったと感じていて。設楽選手が出ていったときも、誰もついていかなかったというのも含めて。そういうこともあり、例えば2人目が出ていったとき、本当ならもう少し様子を見ながら、誰かがつくのを待ってとも思ったんですけれど、そのイメージがあったので、ボクが反応しないと2人目も行かれてしまう、というところで焦りがあったのかなと思いますね。

―― けっこう、様子をうかがっていたんですか。

はい、それもありましたし、いつもはひと呼吸、ふた呼吸おいてから行くんですが、まぁ普段通りに対応してはいたんですけど、通常なら、ふた呼吸しているときにみんなも行くんですけれど、行かなかったので、イチバン最初に反応したというところにつながったんだと思います。

―― あの展開で、どのくらいで仕掛けようと思っていましたか。

最後の最後で勝てれば良いと思っていたので、最後の600~800mまではなるべく力を貯えて、という風に考えながら走っていました。

―― 中村(匠吾)選手が40kmの手前で出たときは。

あのときは、もういっぱいいっぱいで、ついていくことしか考えていなかったですね。その後で足が残っているかどうかまで、もう考える余裕はなかったですね。

―― 勝負を焦った部分はありましたか。

勝負を焦るというのは、もっと余裕があるとき。それとは違いました。ただ単に、あそこは粘るしかなかった。それ以外の選択肢はないという感じでした。

―― 2位を狙う選択肢もあったのでは。

どうですかね。あそこで(力を出しきらずに)貯めたところで、服部(勇)馬選手もおそらくは力が残っていたと思うんですよね。なので、貯めたら2位になったかというと、そういうことでもなくて。最後の競り合いの以前で、勝負は大きく変わっていたと思いますね。10km、15kmの誰かが動いたところで、いかに冷静に対応できたか。ボクも冷静に対応した積りではあったんですが、それ以上に中村選手、服部選手がうまく対応していたんじゃないかなというのは思いますね。

―― 集団の中で、誰が主導権を握るかという争いについては。

そうですね、いろんな人が行きましたが、変に中心になりすぎたなって思いますね。中心選手になりすぎてしまって、なんかこう、足が疲れすぎてしまったという部分が正直なところ。まぁ、反省点としてあったなと思います。

―― それが最後に影響したのでしょうか。

そうですね、ほんと15kmでの、判断ミスではないんですが、ちょっとした掛け違いが最後に出たなというのはすごく思います。

―― 15kmというのは?

正確には覚えていないんですが、最初に誰かが、鈴木(健吾)くんかな?山本(憲二)さん?あたりが出たときに、イチバンに対応してついていってしまったので。そこが(レースプランが)狂ったというわけではないんですが、そこから徐々に悪いサイクルにはまったというのは言い過ぎですが、分かれ道だったんではないですか。

―― タイムを競うレースと、順位を競うレースの駆け引きは違いますか。

いつも、勝つ、表彰台に上る、ということを意識して走っています。いままで1度もタイムを意識して走ったことはないので、その辺りは、いままでのレースと大きな違いはありませんでしたが、今回は順位がすべてということで、プレッシャーのかかる大会だったと。ほかの選手も含めて、みんなそうだったんじゃないかと思います。

トラック競技以上に、小さな判断の違いが後半に影響する

―― 足のキツさを感じたのは、どのあたりでしたか。

中村くんが動く前に、誰かが動いたと思うんですが、そのときに。まぁみんなキツかったと思うし、暑かったし、つっている人もいましたし、徐々にきた感じですね。イチバンやばいかなと思ったのは、場所は正確に覚えていないんですが36km、37kmあたりですかね。でもいつも、これは今回の大会に限らず、マラソンは35kmから、どの大会でもキツいので。

―― テレビの解説では、いつもより(大迫選手の)上下動が大きかったんではないか、と言っていました。

単純にキツかったからと思いますけど、そのへんは大したことではないかなと思います。もちろん中村くんや服部くんと比べると、だいぶもともとの走りに上下動があったりとか、わりと跳ねるというか、ちょっと動きが大きい走りなので、余計にそう見えてしまったのかなと思います。

―― 2回の折り返し地点で、設楽選手を確認されたりしましたか。

すれ違いざまに。キツいか、キツくないかというのは別にボクらでは判断できないですし、そこには興味なかったんですけど、ひとつ情報として、入ってはきていましたね。

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