インタビュー
2017年6月29日

ジャズダンサーだった少年がバレエダンサーになるまで【バレエダンサー竹田純インタビュー(前編)】

 床に座った状態でバレエの動きを行う床バレエ。日本ではあまり知られていなかったこのメソッドを広めたのがバレエダンサーの竹田純さんです。

 2011年に発売した『バーオソル・ダイエットーバレエダンサーのしなやかな身体の秘密』(講談社)はベストセラーを記録。その端正なルックスと、引き締まったボディから“美尻王子”の異名を持つまでに。

 そして現在は、バレエダンサーとしての活動を続けながら、バレエ・床バレエの講師として多くの人を指導。さらにTV番組でもレギュラーを持ち、その人馴染みの良いキャラクターでお茶の間に愛されるまでになっています。

 そんな竹田さんに、バレエを始めたきっかけや、床バレエとの出会いなどについて伺いました。

遅咲きのバレエダンサーの誕生

——竹田さんはバレエを始めたのが17歳からなんですよね。

そうなんですよ。

——その年齢からバレエを始める人ってけっこう珍しいですよね? どちらかと言うと、バレエって幼い頃から習っている人が多いイメージがあります。

そうかもしれないですね。

——それから1年後には東京バレエ団に所属していますが、普通では考えられないスピードです。才能があったんでしょうね。

なんか、当時は誰でも入れたみたいよ。

——いやいや、誰でも入れるわけではないですよね(笑)。

もちろん誰でもってわけではないかもしれないけれど、僕が入団したときは海外公演とか全国公演がけっこう多い時期だったから運も良かったのよ。そういうときっていっぱい入団させるから。

——もしかしたら原石のようなものを感じたのかもしれないですよね?

良い方向に持っていっていただいてありがとうございます。でも、その当時はただ身長が高いだけのマッチ棒みたいでしたよ。

——そもそもどういうきっかけでバレエの道に進んだんですか?

15歳くらいからジャズダンスを習っていたんですよ。

——ジャズダンス?

そう。当時、僕はジャネット・ジャクソンが大好きだったんですけど、彼女の後ろでめちゃくちゃカッコよく踊っている人たちがいて。彼らみたいになりたいと思って。16歳のときには単身ロサンゼルスに行って、現地のダンス教室に参加してみたこともありましたね。そこでドレッドヘアーの少年と出会ったんですけど、頭をぐるんぐるん回しながら踊っているの。それを見たら負けてらんないと思っちゃって、帰国後に同じように頭を振りながら踊ってたんですよ。そしたらダンスの先生にびっくりされちゃって「そんなに頭を振って踊らないで」って注意されちゃったりして(笑)。

——それがどうしてバレエに?

あるときダンスの先生に「バッグダンサーはいつまでもバックでしかないわよ」って言われて、そのときに「あっ」と思ったの。「バックは嫌!」って(笑)。多分、僕が目立ちたがりだってことに気づいてたんだと思います。頭をこれでもかと回しながら踊るくらいだから(笑)。それで「バレエならメインになれるよ」ってアドバイスをくれて。もう、すぐにバレエやろうって思っちゃったのよね。

——素直だったんですね。

洗脳されやすいタイプなんだと思う、僕。

約束された未来より、自分の心に従ってフランスへ

——2003年からはフランスに留学していたそうですが、何かきっかけがあったんですか?

それについてはここでは言えないくらい大変なことがたくさんあったんだけど、それを抜きにしても基礎がない状態のままバレエを続けていくことに危機感を覚えたんです。当時は団長さんに気に入られていて、実力もないのに何かしら役をもらえていたんですよ。でも、その状況に甘んじていたら良くないなと思うようになって、もう一度しっかりバレエのことを勉強しようと。

——止められたりはしなかったんですか?

しました。団長には両親を2回ほど呼ばれて説得されたし、すっごく良い待遇も用意してくれて。でも、「フランスに行きます」の一点張り。

——意志が固かったんですね。

僕、小さい頃に習字とか水泳を習わされていたんですけど、どれも1ヶ月続くことがほとんどなくて。そういう飽きっぽい性格だから、両親も自分がダンスに真剣になって取り組んでいると思ってなかったんですよね。でも、そのときばかりは何も言わずにフランス行きを認めてくれて。それくらい切迫した雰囲気があったんだと思います。もしあのまま東京バレエ団にいたら、今よりも良い生活が約束されていたかもしれないけれど。

——でも、その決断があるからこそ今があるわけですしね。

そうですね。ちゃんと自分を出せないままでいたと思います。だから、今の方が心はリッチって感じ。

——実際、フランスはどうでしたか?

日本と違って枠にはめるということがすごく少ないんですよね。“自分はどうするか”をすごく求められました。だから、表現の幅が広がりましたね。あと基礎をすごく大切にする。基礎練習を身につけるのに4年間は費やしましたからね。

——4年間!?

同じことをもう何百万回と繰り返して。でも、それがあったから忙しくてバレエができない時期があっても、ちょっと練習すればシルエットとか美しいラインを保てることができるようになりましたね。

——頭で理解するというより、カラダに染みつけるという方が近いかもしれないですよね。

あと、もっと根本的なところ、たとえば解剖学だったり、骨の動きだったりというところからバレエの動きについて学べました。それがわかってるのとそうでないのとでは、同じポジションでも感覚が全然違うんですよ。

⇒後編に続く

[プロフィール]
1982年静岡県生まれ。バレエダンサー・床バレエ講師。1999年に I・R・Mアカデミーでバレエを始め、2000年に東京バレエ団に入団。2003年にフランスへ渡り、クラシックバレエ、コンテンポラリーダンスを学ぶ。その後、数多くのバレエ団に所属し、現在はバレエダンサーとしてだけでなく、バレエ・床バレエの講師としても活動。2011年に発売した『バーオソル・ダイエットーバレエダンサーのしなやかな身体の秘密』(講談社)がベストセラーに。 続く2012年に発売した『1日10分でやせられる バーオソル・ダイエットDVD BOOK ―バレエダンサーのしなやかな身体の秘密―』(講談社)DVDは、バレエの殿堂でもあるパリ・オペラ座ガルニエ宮でも販売されている
【床バレエについて】https://www.yukaballet.jp/
【講師を務める床バレエ教室】http://www.wingtheater.jp/meguro

<Text:村上広大/Photo:冨田寿一郎>