インタビュー
2017年8月1日

アスリート時代から変わらぬお気に入りはアロマ。杉山愛が学んだ、スポーツを通して知る自分自身との付き合い方<Vol.4>

 テニスプレイヤーとして長年世界のトップを駆け抜けてから引退、その後に続く人生でもテニスと関わり続けていくことを選び、母として、指導者として、世代を越えて注目を集める杉山愛さん。

 最終回となる今回は、杉山さんの気になる持ち物とそのこだわりについて、それも含めてスポーツから得た気づきについてお話を伺います。

世界中のどこにいてもアロマで身も心も平常に、心地よく

ーー普段欠かさず持ち歩いているお気に入りのアイテムなどは、ありますか?

 選手時代から使っていたのはアロマオイルです。選手時代には海外遠征でさまざまなホテルを転々としていましたが、いいプレイをするためにも、そんなある意味「非日常」ともいえる時間や空間を、いかに「日常」にしていくかということが大切でした。とくにアロマは普段からマッサージに使用していますし、実際私にとっては効能もあります。香りでリラックスしたり、シャキッとしたり、緊張感をコントロールするために使っています。アスリートは四六時中、カラダと向き合っていますのでケアの大切さが身にしみついています。半身浴も毎日していたのですが、そこでも筋肉に作用するアロマを取り入れていました。また筋肉の状態に合わせて調合を変えたアロマでオイルをつくり、それでマッサージをしていました。

ーーどのようなものを使っていますか?

 普段使っているもののなかから、今日もいくつか持ってきました。最近でしたら無印良品のものがどこでも手に入りやすくよく使っています。

ーー目的に合わせてどのように香りの使い分けをされていますか?

 選手時代でしたら、プロのマッサージ師の方に施術してもらったりしていたのですが、筋肉を解きほぐすオイルマッサージのために使うことが多くて。ふくらはぎや足の裏は選手時代から自分でもいつもやっていました。香りの中でも、ゼラニウム、ローズマリー、ジュニパーベリー、マジョラム、ラベンダーは私のお気に入りトップ5です。オレンジも好きですし、ネロリも甘い薫りがふわっと香ってリラックスするときに使用することもあります。筋肉的な作用では先程の5つをその時々でブレンド具合を変えて使っています。

ーーどのように調合されていますか?

 私の場合はベースオイルとするホホバオイルなどに希釈して使っています。それを出先でその都度調合して使っている感じですね。今日は基本的なものだけを持ってきましたが、多いときには30種類くらい持ち歩いているんですよ。

ーー海外でもですか?

 はい。国内でも海外でも、つねにです。

ーーその習慣は現役を引退された今も旅先などで変わらず続けられているのでしょぅか?

 はい。そうです。冬にはマスクにラベンダーのアロマをつけてみたり、ティーツリーは風邪予防にも効果があるので、出先でも水に加えて、それでうがいをしています。

ーーアロマに関しては身体への作用もそうですが、メンタル的な働きかけもありますよね。

 そうですね。特にラベンダーはリラックス効果をもたらしてくれる香りですので、ピリピリとしてなかなか眠れないような時に、枕元に垂らすだけでもだいぶ違います。以前から花の匂いや薫りが好きでしたが、昔はアロマといえばローズやラベンダーくらいで、種類はそれほど手に入れることができませんでした。今ではどこにいってもかなりの種類を手に入れることができるので、気分を変えたい時やカラダのコンディションをリセットしたい時に、アロマを使うことはおすすめしたいことです。

変わらぬ香り、変わらぬ自分らしさに気づくことの重要性

ーー出先でアロマを買われることもありますか?

 ちょうどなくなってしまった時には現地のお店に行って買うこともあります。またフランスやイギリスのものはやはり香りの質が良いものが多く、気になるものを見つけたら新たに買うこともあります。

ーー新しい香りにもチャレンジされたりするのですか?

 香りは意外に好みが変わらないものなので、好きな香りをリピートする感じですね。私がヘヴィーユーズしているのは昔から変わらず、ゼラニウム、ローズマリー、ジュニパーベリー、マジョラム、ラベンダー、そして、オレンジ、ネロリの7種類です。

ーー意外にメーカーによって肌に合う、合わないもありますしね。

 それが私、肌はめちゃくちゃ強くて(笑)。いまだかってアロマやそのオイルで肌荒れしことはないんですよ。

ーーそれはいいですね! ちなみにアロマ以外でケアに使われてるものは何かございますか?

 今も昔もあまり時間がないので、お化粧も基礎化粧品くらいしか自分では使いませんし……洗顔くらいですかね。気をつけていることは。

ーーあらためて杉山さんにとって、スポーツで得られる人生の豊かさとはどのようなことだと思われますか?

 やはり、好きなスポーツをして身体を動かすことは、カラダもですが、気持ち、心がリフレッシュすることなのだと思います。競技の種目はなんでもいいと思うのですが、私自身、カラダを動かしカラダが喜んでいる状態というのは気持ちがいい、メンタルにも良いことだといつも思っています。現役を引退して、以前に比べれば汗をかくことがめっきり減ってはしまったのですが、その素晴らしさは今も思います。現在スポーツをされている方もそうでない方も、スポーツを通じて新たな自分発見をしていただきたいですね。

ーー最後に、MELOS読者、働く同世代に向けてのメッセージをお願いします。

 今、私は40代なのですが、20代より30代、30代より今が楽しいと思っています。時を重ねて、昨日より自分を知ることによって、より自分らしい「生き方」ができるようになると私は思っています。それは仕事も一緒で、歳を重ねて自分を知ることで、自分らしい仕事や、働き方ができると、私自身実感しているところです。大事なのは、いくつになっても、自分らしく生きているかということ。思い通りに行かないこともあっても、そんな過程を経たからこそ、よりよい生き方ができるようになると思います。それに気づくことに遅いということはありません。そのためには自分の時間、趣味でもそうですが、日々忙しい時間の中でも自分自身に目を向ける時間を持つということが大切だと思います。

[プロフィール]
杉山 愛(すぎやま・あい)
1975年7月5日生まれ、神奈川県出身。元プロテニスプレーヤー。4歳にテニスを始め、17歳から34歳まで17年間、世界各国のプロツアーを転戦。女子ダブルスでは、全米、全仏、全英で優勝。グランドスラム(全豪、全仏、全英、全米)におけるシングルス連続出場記録62回は、女子歴代1位。WTAツアー最高世界ランクは、シングルス8位、ダブルス1位

<Text:加藤孝司/Photo:鈴木慎平>