インタビュー
2017年7月26日

夫の生活を優先して時間を区切って働く。いい仕事をして、いい顔で家に帰りたいから。プロ野球・涌井秀章の妻・押切もえ<後編>【アスリートの妻が教えるとっておきレシピ #2】

 スポーツ選手を夫に持つアスリートの妻(アス妻)。ご自身も著名人として活躍されている注目のアス妻たちにご登場いただき、食事作りや勝負メシ、さらには日々の暮らしのことなどをお訊きしようという新連載。

《前編はこちら》
・料理を学ぶのはパートナーの成績に関わることだから。プロ野球選手・涌井秀章投手の妻・押切もえ<前編>

 トップモデルとしての顔のほかにタレント、作家として多方面で活躍する押切もえさんインタビュー後編では、アス妻になることへの覚悟やお仕事と家事の両立のこと、ご自身のリラックス法などについて伺いました。

「アスリートの妻」への不安を吹き飛ばしてくれた旦那さまのひと言

--プロ野球選手である涌井投手とご結婚されるとき、アスリートの妻になることへの覚悟や心構えのようなものはありましたか?

 そうですね……、ありましたね。ちょっとプレッシャーで、結婚する前からできるかなぁって、戸惑っている気持ちはありました。気負いすぎていた部分はありましたね。

--気負いとは、どんな感じで?

 選手によると思うんですが、本当に四六時中というか、食事を1日3食すべて管理して、メンタル面もケアするのを必要とされているアスリートの方もいるというようなことを聞いていたので、もし、夫がそうだったら私はそれができるかなと。クヨクヨ悩んでた時期もありました。勝手に思い込んで(笑)。

 結婚する前に、(夫に)そういうことが完璧にできないかもしれないって、なんとなくビクビクしながら伝えたら、「そんなことはお願いしてないよ」って言われて。それで一気に肩の荷が降りて。いろんな夫婦の方がいて、いろんなご家庭のルールがあって、選手によってもぜんぜん違いますし、ひとまず安心はしました(笑)。

 よくゲンかつぎとかされる方が多いんですけど、夫の場合はないですし、むしろ無頓着なぐらいで(笑)。なので、そういう面では助かりましたし、自分ももっと知識をつけて役立ててもらいたいなっていう気持ちがより高まりました。言ってもらったおかげで、自分がもっと協力したいと思うようになりましたね。

--メンタル面もとおっしゃっていましたが、涌井投手の方からたとえば「今日、試合がさぁ……」みたいな話があったら、励ましたりとかってあるんでしょうか?

 ああ、そういうのはないですね。夫はもう絶対、自分を出さないです。いい意味でも悪い意味でも。いいときは私が聞いたら答えてくれますが、悪いときでもぜんぜん機嫌も悪くならないし、フラットなんです。球場を出たら忘れるようにしているみたいですね。

--それは知り合った頃から変わらないんですか?

 変わらないですね、もうずっとおっとりしてますね。だからケンカもぜんぜんしないです。感情がフラットなので、夫がまず怒らない(笑)。

--やっぱり、そういう方が好みのタイプだった?

 そうかもしれないですね。私みたいなペースで、同じように感情が豊かで、みたいなタイプじゃないほうが多分いいんでしょうね。穏やかな人のほうが。私の話もずっと聞いていてくれて(笑)。

目覚めたら腹式呼吸でひと息して頭を整理。仕事は空き時間に

--アスリートの奥さまであることだけでも大変だと思うのですが、仕事を持つ主婦として家事と仕事の時間のやりくりはどのように工夫されていますか?

 以前は、朝起きたら「ああ、あれやってこれやって」って思ってしまって、ちゃんと全部が片付かないみたいな感じでした(笑)。ですが、今は起きて1回ひと息つくことにしています。腹式呼吸をして、それでだいぶ頭がすっきりするというか。目が覚めてすぐに10分ぐらいストレッチして、腹式呼吸を少しすると肩の力がどんどん抜けてきて、自然とやることが整理されますね。あとはやっぱり夫の生活を優先にして、空き時間にいろいろやるという感じです(笑)。

--家庭に影響のないような働き方を工夫されているんですね。

 そうですね、夫が練習しているときに原稿とかを書いたり、遠征に行っているときにお仕事入れたりとか。だから日程によってはちょっと遠慮してしまうお仕事とかもあるんですけど、事務所の方にそういう感じで組んでいただいてます(笑)。やっぱりひとりでは全部コントロールするのは難しいので、周りの方にも「今日、ちょっと試合で何時までには出たくて」とか、前もって伝えておいたりしてというのが大事かなと思います。

--そういう感覚っていうのは、普通の働く主婦の方と一緒ですね、時短勤務みたいな。

 うーん、そうですね(笑)。時間で区切ったほうが上手くいくこともきっとあるのかなと、いいふうにとってますけど(笑)。

 

新刊のお知らせです! The new book will be released! 7月4日(火)、初の児童向け書籍📖を発売します。 タイトルは『わたしからわらうよ』(ロクリン社) 🌸 文章と、表紙の絵や挿絵も担当させていただきました。 昨年から書き進めていた物語がやっと形になりました。 * ちょっと人見知りで怖がりな小学3年生の桜が、夏休みに鳥取県にあるおばあちゃんの家に一人で泊まりに行くと、そこでは思いもよらなかった冒険が始まって…、というお話です。 * じつはこの本は、一昨年から携わっている「あいサポート運動」で出会ったみなさんとのふれあいから教えてもらったことも、ひとつのテーマになっています。 「あいサポート運動」は、障がいのある方へできる手助けや配慮を考えて、小さなことからでも実践して、みんなで一緒に暮らしやすい社会を作っていこう、というものです。 * まずはじめに大切な自分と向き合うこと、それから相手を思いやること、そしてもっとずっとしあわせでいるためにお互いができること…、読んでくださった方に、ほわっとあたたかい思いが少しでも伝わってくれたらとてつもなく嬉しいです。 お子さんだけでなく、大人の方にもきっとどこかで共感していただける本だと思います。これをご覧のあなたにお手に取ってもらえたら幸せです。 よろしくお願いします ^ ^ #new #book #お知らせ #新刊 #ロクリン社 #児童向け #鳥取 #あいサポート #わたしからわらうよ #ハッシュタグをつけてくださっている方の記事や感想は全部読んでいます #いつも本当にありがとうございます

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明るい奥さんになって、どんどん信頼を深めていける夫婦でいたい

--ご自身も健康で元気だからこそアスリートの旦那さまをサポートできるのだと思いますが、健康法や気をつけていることはありますか?

 やっぱり、食事は大事ですね。体を作っているのは食事ですから。身体にやさしいもの、安全なものを食べるように心がけています。でも、ストイックにあれはダメ、これはダメではなくて、けっこうあまやかすときもあります(笑)。甘いものも大好きですし、それもたまにはいいかと思っています。あとは精神面ですかね。なんとなくいい家庭を想像すると、やっぱり奥さんが笑っている家だろうなと思うので。自分が明るくいようって思います、ニコニコと(笑)。

--でも、やっぱり疲れちゃうときもありますよね、ご飯作るのめんどくさいなーとか。そんなときに自分を頑張らせる秘訣はありますか?

 「これが終わったらいっぱい寝よう」とか、ご褒美を作ったりしますね。たまに疲れているときは、あとから(夫に)言ったりします。「今日はちょっと疲れてたんだよね〜、早く寝ます」みたいな。

--まだ新米奥さんっておっしゃっていましたが、これからの夢やこうしたい、こうありたいといったことはありますか?

 ずっと暖かい家庭でいられたらと思いますし、お互い新鮮な気持ちも大事にしつつ、どんどん信頼を深めていけたらいいなって思いますね。夫のご両親も昔からすごく仲が良くて、今も一緒に球場に来られて一緒に観戦したりもするんですけど、本当に思い合っていて、ツーカーの仲というか。うちの両親もそうですが、そういう夫婦に少しずつ近づけたらいいなって思います。

--今のところ、OKですか?(笑)

 そうですね(笑)、そんなに大きな問題もなく。仕事もそうです、楽しいっていう気持ちを大切にできたらいいなと思います。もともと(夫に仕事を)応援してもらっていたので。自分も家庭もいいカタチでいられるような働き方ができたらいいなと思いますね。

--それはやっぱり、家族を思う気持ちがあってこそですよね。旦那さまもお仕事について何かおっしゃったりしますか? 本のこととか、絵のこととか。

 けっこう褒めてくれるというか、応援してもらって、私も精神面ですごく支えてもらっていますね。独身だったときよりぜんぜん働きやすいし、生きがいを感じますね(笑)。独身のときのほうがちょっと疲れてたかもしれません。無理してもいいやって思ったりして働いていたときがあったんですけど、今は自分がちゃんとしっかりしていないといけない、健康でいたほうがいいと思っているので。ちょっと責任感も芽生えたというか。あとは喜びも大きいですね。

--大きいというのは、やっぱり1人より2人ということですか?

 はい。いいお仕事をして、いい顔で家に帰りたいなって思いますね。

《前編はこちら》
・料理を学ぶのはパートナーの成績に関わることだから。プロ野球選手・涌井秀章投手の妻・押切もえ<前編>

[プロフィール]
押切もえ(おしきり・もえ)
モデル、作家。1979年生まれ。千葉県出身。
モデルにテレビ・ラジオや広告キャラクター、執筆活動と多方面で活躍中。2015・2016年には二科展絵画部門で入選し、2016年に出版した短編連作集「永遠とは違う一日」(新潮社)は山本周五郎賞候補にノミネートされた

<Text:京澤洋子(アート・サプライ)/ヘア&メイク:深瀬介志/Photo:有坂政晴>