ライフスタイル
2020年6月5日

腰痛はなぜ起きる?痛みのメカニズムと原因の探り方を専門家に聞いた

 ヘルニアやぎっくり腰のように動けないほどの激痛から、なんとなく腰がだるい、重いといった程度の痛みまで。その差はあれど、多くの人が一度は「腰痛」を経験したことがあるのではないでしょうか。「80%の人が人生で一度は経験する」と言われている腰痛について、専門家の先生にお話を伺ってきました。

腰痛ってどうして起きるの?

 「腰痛」って、どんなメカニズムで起きているのでしょうか。

「一般的に『背骨』と呼ばれる脊椎は、椎骨という小さな骨が縦に連なってできています。そのうちの腰の部分は、お腹側に骨と骨の間でクッションの役割を果たす軟骨=椎間板があり、背中側は関節によって骨と骨が連結されていて、その周りを筋肉が覆っているんです。ですから前屈姿勢は椎間板に、腰をそらす姿勢は背中側の関節に負担がかかるわけですね。その負担が大きくなりすぎると椎間板や関節が傷んで痛みがでるのです」

 そう答えてくれたのは、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本障害者スポーツ協会公認障害者スポーツトレーナーの資格を持ち、東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科で准教授を務める小山浩司先生。

傷んでいるのは腰骨か、腰周辺の筋肉か

 このように腰骨そのものに問題があると明確に特定はできないけれど、おそらく使いすぎで腰周辺の筋肉が痛んでいるのだろうと思われる症状全般は「筋・筋膜性腰痛症」と呼ばれるそうです。

「腰回りの筋肉がパンパンに張っていて、伸ばそうとすると痛みがでるのが『筋・筋膜性腰痛症』の特徴。筋肉の強度以上に動きが大きくて負担がかかりすぎているか、あるいは姿勢が悪かったりするせいで、本来は筋肉を使う必要がないところで使っている。要するに筋肉の使い方が悪いために起こる症状です。いわゆる筋肉痛といっていいと思いますね」

 ということは腰痛の原因は腰骨そのものに原因があるか、腰周辺の筋肉が傷んでいるか。そのどちらかなのでしょうか?

「いえ、そうとも言いきれません。実は腰痛の原因は画像に写らないものが85%と言われるほど、お医者さんでも特定するのが難しいんです。心因性腰痛というストレスからくる腰痛も多いですし、稀にですががんなどの腫瘍が原因で起きる腰痛もあります。皆さんびっくりするかもしれませんが、たとえばぎっくり腰って具体的に痛んでいるのが筋肉なのか椎間板なのか関節なのか、まだわかっていないんですよ」

痛みの症状から原因を追究するのは難しい?

 なんと! これだけメジャーな病名にもかかわらず、原因がはっきり分かっていないというのは驚きです。では、痛みの種類から原因を推測することは難しいということ?

「基本的に前にかがんだときに腰が痛い場合はおそらく椎間板がよくない状態で、反対に体を後ろに反らせると痛みがでる場合は、背骨の後ろ側の関節が傷んでいるのではないかと考えられます。足に痺れがでる場合は椎間板ヘルニアの可能性が高いなど、症状から原因が推察できる場合もありますが、それが正解かはいろいろ調べてみないとわかりません。結論から言えば“ここが悪い”と明確に診断しにくいのが腰痛の特徴ということですね」

[監修者プロフィール]
小山浩司(こやまこうじ)
研究分野は健康・スポーツ科学。東京有明医療大学准教授。博士(体育科学)(日本体育大学)。柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本障害者スポーツ協会公認スポーツトレーナー

※本記事はMELOSで公開された記事 慢性化しやすく特効薬もない「腰痛」。その原因・改善方法・メカニズムは?┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(前編) を再編集したものです。

<Edit:編集部 / Text:岩根彰子 / Edit:アート・サプライ(京澤洋子)/ Photo:Getty Images>