インタビュー
2017年8月31日

プロサーファー大村奈央「二度と同じ波は来ないから、いつもワクワクできる」(後編)│サキドリ!ROAD TO 2020

 本企画「サキドリ!ROAD TO 2020」では、今後の活躍が期待される注目アスリートにインタビュー。競技の魅力はもちろん、実際に各競技を楽しんでいる一般競技者にもヒントになる上達のコツやヒントに迫ります。

 第1回に登場するのは、プロサーファーの大村奈央さん。13歳のときにジュニアの日本代表に選ばれてから12年連続で代表の座を守りつつけているだけでなく、世界選手権では5位に輝くなど名実ともに日本トップクラスの実力の持ち主です。この後編では、2020年に向けた抱負などについて伺いました。

《前編はこちら》
プロサーファー大村奈央「今日はカッコよかったな。その感覚だけを頼りにしてやってきた」(前編)│サキドリ!ROAD TO 2020

ただただサーフィンが好きでこれまで続けてきた

——先ほど大村さんは負けず嫌いっておっしゃってましたけど、強い人がいるほど燃える感じですか?

 どうなんでしょう。やっぱりワールドクラスの大会に出場している選手はみんなトップレベルの技術を持っているので、そういう人たちと一緒にいること自体がおもしろいんですよね。

——そういう環境に身を置くことで成長したと感じる機会も多いのではないでしょうか。

 それが具体的に成長したって感じることってあんまりないんですよね。ただただ好きなサーフィンを続けてここまで来たっていう感じです。

——では、日々の課題はどのように見つけて解決しているのでしょうか?

 波って日によっても時間によってもすごく変化するんですね。それこそ、一つひとつの波がすべて違う。だから、未経験のことが毎回起こるんです。それが楽しさであり、難しさでもあるんですけど、そのなかで自分が得意とする波、苦手とする波というものがあるので、その差を埋められるようにしたいと常に思っています。どんな波が来てもいい演技をできるようになりたいなって。

——そのために今取り組んでいることはあるんですか?

 やっぱり波に乗り続けることがいちばんの練習なんですけれど、冬とかは日照時間が少なくなるので、そういう時期には筋力トレーニングを多めにすることもあります。中でも今は体幹を鍛えることが多いですね。安定してボードに乗るとなると、やっぱり体のバランスが大切になるので。

▲© kanasuzuki

——では、食事管理はどうしてるんですか?

 基本的にはしないですね。朝昼晩の3食をしっかり食べることくらい。食事制限も一時期していたんですけど、やっぱり野菜があって、ご飯があって、お肉があってという食事を続けるのがいちばん調子いいですし、疲れにくいです。

——体重を気にしたりすることもなく?

 海外にいる時には体重計は持って行ってないのでわからないですけど、ある程度変わらないようにはしています。とは言っても、食べる量ってそこまで変わらないので、そこまで大きな変化になることは少ないですね。

どんな場所でも自分のサーフィンができるように

——大村さんは1年の3分の2は海外で過ごしていると伺いました。体調を崩すことなどはないのでしょうか?

 実はそういうことはほとんどないんです。時差ボケにもなりませんし。

——初めての場所でもあまり動じませんか?

 自分の安全は自分で確保しないといけないので、そこまでワクワクするという感じではないですが、どこに行っても自分のサーフィンをするっていう心持ちでは常にあります。それ以外のことはとりあえずなんとかなるだろうっていう感じです。

——心が決まっているんですね。

 そうかもしれないです。

2020年までに世界でメダルが獲れる選手になりたい

——2020年の東京五輪の種目にサーフィンが選ばれましたが、決まったときの心境はいかがでしたか?

 すごくうれしかったんですけど、なんだか不思議な感じがしました。ただの夢が掴める夢になったから。

——会場予定となっている釣ヶ崎海岸に対する印象はいかがですか?

 本島の中では比較的うねりが入りやすいので、波が立ちやすいかなって思います。もちろんその時々によって違うんですけれど、私にとっては乗りやすい波が多いですね。

——照準は自然と2020年に向けられているのでしょうか?

 選手としてはそこをピークにしたいなと思っています。でもその前に世界選手権でメダルを獲りたいですね。それができなかったら五輪でメダルを獲ることは難しいと思うので。

——あらためて大村さんにとってのサーフィンの魅力とは何なのでしょうか?

 私はサーフィンが大好きで常に上手になりたいと思ってるんですけど、それだけでなく、自然の素晴らしさを感じられるのも魅力だと思っています。今日は夕日が綺麗だなとか、この場所だったらいちばん星はあのあたりに出るなとか。そういう自然の変化を間近で感じられるのもサーフィンを続けている理由のひとつかもしれません。

▲© SUGANO DAISUKE

——最後に、サーフィンに興味があって、これからやってみようと考えている人に向けて何かアドバイスをいただけますか。

 サーフィンってなかなか一人で始めるのが難しいスポーツだと思うんです。海にはルールがあって、それを守れないと自分だけでなく、周りにも危険が及んでしまうので。だから、まずは一緒にサーフィンをしてくれる人を見つけるのがいいかもしれません。それが経験者だと頼もしいはず。もしくは、私のようにサーフショップに行ってみるのもいいかもしれません。サーフィンを始めるにあたって何が必要かを親切に教えてくれるはずですよ。

《前編はこちら》
プロサーファー大村奈央「今日はカッコよかったな。その感覚だけを頼りにしてやってきた」(前編)│サキドリ!ROAD TO 2020

[プロフィール]
大村奈央(おおむら・なお)
1992女子プロサーファーとして世界ツアーを中心に活動中。13歳でジュニア日本代表に選ばれてから12年連続で日本代表に。17歳でプロ試験に合格と同時に、JPSA2010年ルーキーオブザイヤー、年間グランドチャンピオンも獲得。また2013年、2014年の世界選手権では日本人最高位となる5位に入賞、2017年も7位入賞と第一線で活躍を続けている

<Text:村上広大/Photo:今井裕治>