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2020年2月6日

「NIKE厚底シューズ」の正体とは?東京五輪でどうなる?世界陸連の新ルールは?これまでの足跡とトップランナーの証言をもとに再考察した (1/3)

 NIKEから2月6日、さらに厚底になった新型ランニングシューズ「ナイキ エアズーム アルファフライ ネクスト%(Nike Air Zoom Alphafly NEXT%)」が発表されました。

 今年の箱根駅伝で、「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」が84.3%という驚異的な着用率を見せたからか、厚底ランニングシューズに対する日本での報道が増加。英国メディアが1月中旬に、世界陸上競技連盟(世界陸連/ワールドアスレティックス)による規制が入るのではないかと報じられて大きな話題となり、1月末には新たなルールも発表されました。

 マラソン界を席巻し続けるこの厚底シューズ、東京オリンピックではどうなる? 1月31日に発表された世界陸連による新ルールとは? 実際に着用しているトップランナーの証言などをもとに、あらためてこのシューズの現状と今後を考えてみました。

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【詳細レポート】
NIKE幹部が語る、新型厚底シューズ「アルファフライ ネクスト%」の実力とは?短距離・中距離スパイクも登場

 東京五輪のマラソン日本代表選考レースのMGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2019年9月開催)や、今年の箱根駅伝で驚異的な着用率を見せ、大きな話題となったNIKE(ナイキ)の厚底シューズ。

 その厚底シューズの新世代モデルとなる「ナイキ エアズーム アルファフライ ネクスト%(Nike Air Zoom Alphafly NEXT%)」が2月6日未明、ついに発表されました。また今回の発表された陸上競技向けシューズには、アルファフライ ネクスト%を含む5種がラインアップしています。

 なお、1月中旬にはNIKE幹部が来日し、国内メディアに対して発表イベントを行っています。今回はその際にNIKEから紹介された内容と、日本時間6日未明にグローバルに発表されたプレスリリースをもとにしたレポートをお届けします。

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厚底シューズが生まれたのは2017年。翌年に設楽悠太が日本新

 ランナー以外からも注目を浴びるようになったNIKEの厚底ランニングシューズですが、その登場は2017年に遡ります。

 42.195kmを2時間以内で完走する。アスリート、科学者、デザイナーたちが一丸となり、2時間の壁に挑んだNIKEのプロジェクト「Breaking2」が、2017年5月6日に開催されました。F1の聖地としても知られるイタリアのモンツァ・サーキットを舞台に、エリウド・キプチョゲ選手、ゼルセナイ・タデッセ選手、レリサ・デシサ選手の3人が、このプロジェクトのために開発された「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート」を着用。惜しくも2時間切りはならなかったものの、エリウド・キプチョゲ選手が、非公認記録ながら2時間0分25秒という驚異的なタイムで、42.195kmを走りきりました。そして2017年6月に、「Breaking2」で使われたシューズをベースとした、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」が発売されました。

▲ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート

▲ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%

 「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の特徴は、軽量でクッション性に優れた「ズーム X フォーム」フォームを大容量で使った分厚いミッドソールと、その中にフルレングスで搭載されたカーボンファイバープレート。テスト時に「ナイキ ズーム ストリーク6」と比較して、ランニングエコノミーが4%アップ(4%力をセーブできた)ことが、モデル名の由来です。

 レースで結果を出し、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の存在を日本に広げたのが設楽悠太選手。2017年9月のウスティ・ハーフマラソンで、従来の日本記録(当時)を8秒更新する1時間0分17秒をマークして8位に。さらにその8日後にベルリンマラソンに出走し、2時間9分3秒という当時の自己ベストで6位なりました。そして2018年2月。東京マラソンに出場した設楽選手は、2時間6分11秒のタイムで準優勝。16年ぶりに日本記録(当時)を塗り替える快走でした。

▲設楽悠太選手(Photo:編集部、2018年11月撮影)

キプチョゲの世界新記録、そして大迫の日本新記録

 2018年8月には、アッパーに軽量で通気性に優れ、より足へのフィット感が高い「フライニット」を採用した「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」が登場。このモデルでも快挙が誕生します。

▲ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット

 2018年9月、エリウド・キプチョゲ選手が、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」をベースにしたモデルを着用してベルリンマラソンに出場。従来の世界記録を1分以上も縮める2時間1分39秒というとてつもない記録をマークしました。同10月には、大迫傑選手がシカゴマラソンに出場。2時間5分50秒という日本新記録で3位に。このレースでは、上位5選手が全員NIKEの厚底シューズだったことも話題になりました。

▲ベルリンマラソンで優勝を果たしたキプチョゲ選手(Photo:Getty Images)

▲シカゴマラソンでの大迫選手

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