インタビュー
2017年7月28日

体と対話して自分に合ったドリンクを選ぶこと。有森裕子に聞く!ランナーのドリンク事情(前編) (1/2)

 年々増加する市民ランナーの間で大きな注目を集めている、トップランナーたちのスペシャルドリンク。「同じものを飲んだら、私ももっと早く走れるかも?」。そんな期待もふくらみますが、体に入れるものである以上、きちんとした知識は大切です。
 
 そこで、自分に合ったドリンクの選び方や効果的な摂り方などについて、オリンピック2大会連続メダルの偉業を成し遂げたマラソン界のレジェンド、有森裕子さんに教えてもらいました。

レース中の給水ミスは大きなダメージにつながる

——すごく初歩的なことから伺いますが、マラソン中にドリンクを取ることには、どういった必要性があるのでしょうか?

運動をして汗をかくと、水分以外に塩分や鉄分、ミネラルといった栄養成分も一緒に抜けていってしまいます。マラソンは他のスポーツよりも競技時間が長いので、汗の量も失われる栄養成分も、それに比例して多くなる。マラソン中の給水は、ただ単に水分を補給すれば良いというものではなく、不足した栄養素を補うとともに、脂肪をエネルギーに変えるなどの特別な機能を促すものを摂取する必要があるんです。

——トップランナーがレース中に飲むドリンクのボトルには、どれくらいの量が入っているのですか?

そんなにゴクゴク飲むわけではなくて、せいぜい一口か二口程度なので、多くても150ccくらい。量が多いと持った時に重くて、その分ハンデになっちゃいますしね。また、飲んだ時に「ぬるい」と感じるのが嫌な人は、夏場は氷を入れたり、小さい魔法瓶に入れたりします。でも、あまり冷たいと内臓に負担がかかってしまうので、冷やしすぎには要注意。私はドリンクの温度にはこだわらなかったので、常温になっても大丈夫でしたね。

——やはり給水ポイントでドリンクを取り損ねたりすると、その後の走りに影響しますか?

機能性ドリンクを摂取すれば、レース後半になってもエネルギー切れはしません。それは実際に体感してきました。逆に取らなければ、後でガタンときちゃいますね。
 
給水所でドリンクをうまく取れずに、給水に失敗する選手も時々いますが、それは致命傷になりますよね。特に夏はダメージが大きい。ボトルの取り方は技術的なものもあるけれど、しっかりと取れる位置を自分で確保しないといけません。

——有森さんもドリンクを取れなかった経験はありますか?

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