インタビュー
2018年8月29日

NHK「みんなで筋肉体操」出演で注目度アップ。筋肉庭師・村雨辰剛が筋トレに励む理由(前編) (1/2)

 海外ファッション誌から飛び出てきたような端正なビジュアルと抜群のスタイルを持っているかと思えば、本職は庭師、そして流暢に日本語を操るその姿——。

 スウェーデンで生まれ育ち、高校卒業後に語学教師として来日した村雨辰剛(むらさめ・たつまさ)さんは、23歳の時に見習い庭師となり、26歳で日本人に帰化。趣味は筋トレと肉体改造だそう。現在では、話題のTV番組『みんなで筋肉体操』(NHK)などに出演し、庭師のほかモデル・タレントとしても活躍する異色の経歴の持ち主です。

 庭師として、常に「美」を追求する村雨さんに、今回MELOS取材班は「日本庭園の美」から「肉体美」まで伺いました。

庭師こそ自分が求めていた仕事だった

――10代のころから日本に興味を持っていたそうですが、興味を抱いたきっかけを教えてください。

幼い頃から生まれ育ったスウェーデンから飛び出したい気持ちがありました。日本は島国なので、大陸から入ってきた文化が独自の発達を遂げ、ほかの国にないものが生まれた。そういう独特の文化が僕には新鮮で刺激的に映りました。

――19歳で来日して、11年目(2018年8月現在)。現在は庭師として働かれていますが、この職業を選んだ理由はなんでしょうか?

正直言えば、私は庭師でなくても良かったんです(笑)。親方から技術を習い次の世代に伝えていく“徒弟制度”のある仕事であればなんでもいいと思っていました。そんな時にある日、求人誌で家の近くの造園会社のアルバイト募集を見つけたんです。造園業って何だ?と調べてみたら、日本の伝統文化であり徒弟制度もある。これは僕が求めていた仕事じゃないかと(笑)! その夜に面接に行き、採用していただきました。そこでアルバイトとして経験したあと、愛知県西尾市にある「加藤造園」に本格的な弟子入りして、5年間修行をさせてもらいました。

――26歳で日本に帰化しましたが、なぜ“日本在住スウェーデン人”ではいけなかったのでしょうか?

これは僕のこだわり、としか言いようがないのですが……。僕は日本で一生生きていくのであれば、日本の社会や政治にも興味を持って、そこに住んでいる者としての責任を果たすべきだと思うんです。そのためには日本人になる必要があった、というだけです。

――村雨辰剛という名前は“THE日本男児”という印象があります。名前の由来を教えてください。

日本人になるのなら日本的な名前にしようと思っていました。相撲ではしこなを親方が付ける文化がありますよね。僕も親方に付けてもらいたかったのですが、責任が重いと断られてしまって。その時、親方のお父様が「村雨退二郎という作家の名前が印象的だったから、村雨にしたらどうか」と(笑)。日本刀に使われる呼び名でもありますし、何より響きがかっこいいと思ったので、姓を村雨にしました。親方のお父様から「名前負けしないような人生を送れ」と言われ、身の引き締まる思いがしました。そして辰は僕の干支、剛は親方の名前から1文字拝借しました。

――ヨーロッパには“ガーデニング”がありますが、日本庭園の違いはどこにあると感じていますか?

ガーデニングと日本庭園は美意識が全く違います。西洋の国を含む多くの国では形が整ったもの、人工的なもの、半永久的に残るものが美しいとされています。例えば、ヨーロッパのお城の庭を想像してみてください。左右対称で木々も刈り込んだものが多い。ヨーロッパに多いバラも長い間咲くことから好まれています。

一方で、日本では不揃いの美しさといいますか、自然そのままの美しさを愛でる傾向があります。ひとつとして同じものがない岩やコケに“味”を感じ、桜のように一瞬にして散ってしまう”儚さ“に美しさを感じる。「深み」があり、そういう日本の美意識が好きなんです。

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