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2020年7月17日

「一輪車」はどのようにして日本に広まった?歴史と流行を調べてみた│懐かしのスポーツ回顧録

 かつて人気だった懐かしいスポーツや遊びにフォーカスして紹介していく本企画。今回は、1980年代に小学生だった方には懐かしい「一輪車」のお話です。一輪車で遊んだこと、覚えてる?

使い勝手の悪さから生まれた一輪車

 一輪車の原型は、19世紀の半ば以降に流行った「ペニー・ファージング」という、前輪が後輪に比べて非常に大きい自転車だといわれています。ペニー・ファージングは現代の自転車と違ってチェーンが付いておらず、ペダルは前輪に直接繋がっていました。また前輪に直結したペダルをこぐため、サドルは前輪のほぼ上にあり、前後のウェイトのバランスもよくありませんでした。

 そこで、どうせバランスが悪いなら後輪なんていらないとでも考えたのか、しだいに前輪だけで乗り始める人が現れたことから、現在見られる一輪車の歴史が始まったとされています。しかし、一輪車を乗りこなすには相応の技量が必要で、当初はおもにサーカスなど曲芸用の乗り物として広まりました。

▲一輪車の原型とされる、前輪にペダルが付いた二輪車

日本では80年代に広く認知された

 日本で一輪車が広く普及したのには、「公益社団法人日本一輪車協会」の活動によるところが大きいでしょう。同法人は、一輪車というスポーツを通じて楽しみつつ健康と体力を養成する趣旨で、1978年(昭和53年)に日本一輪車クラブとして設立された団体です。

 そして1981年(昭和56年)には「財団法人日本宝くじ協会」の助成を得て、全国の「体力づくり推進校」などに一輪車を寄贈しました。それを機に一輪車は当時の児童たちの間で一気に広まることになったのです。その頃に小学生だった方は、いきなり一輪車が大量に学校に出現して、昼休みなどに遊んだ記憶を思い起こされたりしないでしょうか。

 さらに、のちの学習指導要領の改訂で体育の正式な教材として一輪車が採用されたことにより、普及にいっそう弾みがつきました。現在では全国の約90%の小学校に一輪車が導入されているとされ、とても身近な乗り物になっています。

 おそらく20代、30代の読者の方の中には、授業でのみならずクラブ活動でも乗るくらい一輪車にハマっていたという方もいらっしゃるかもしれません。こういった普及活動を受けて、現在ではレース部門や演技部門で全国一輪車競技大会、全国小学生一輪車競技大会などが開催されるまでになっています。

慣れるまでが大変!? 一輪車の乗り方を紹介

 一輪車で遊ぶ際の醍醐味は、なんといってもさまざまなテクニックを習得できたときの達成感に尽きます。代表的なテクニックをいくつか挙げてみると、まずは左右のターン。ハンドルが無いので左右への体重バランスを調整するだけで進路を変える基本的なテクニックです。これができなければ、スラロームや円、8の字といった走行もできません。

 またその場でとどまるアイドリングやバック走行もあります。さらに、その場で連続してジャンプするホッピングなどの挑戦しがいのある高度なテクニックもあり、それらすべてを繋ぎ合わせて成功させることに熱中した方も多いでしょう。

「背筋を伸ばして遠くを見る」がコツ

 いくつかのテクニックを列挙しましたが、まずはひとりで乗って真っ直ぐ走れないと話は始まりませんし、そこでつまずくケースが多いのも、一輪車の特徴です。手すりのあるところや補助の人についてもらって、練習を始めるのが定石でしょう。基本となるバランスをとるコツは、怖がらずに姿勢をピンと伸ばして、足元を見ずに遠くを見ることだとされています。

 一輪車はバランス感覚を養うと同時に、ふだん使わない筋肉を使う運動にもなります。地域によっては大人も参加できる一輪車のクラブやサークルもあるので、子ども時代に遊んだ経験のある方は昔を懐かしみ、参加してみるのもいいでしょう。乗った経験が無い方も、新しいチャレンジとして一輪車に乗られてみてはいかがでしょうか。

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《参考文献》
「できたよ一輪車」ベースボール・マガジン社
「マウンテンバイク 自転車・一輪車」ポプラ社

<Text:上野慎治郎(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>