2019年2月3日

金哲彦がマラソン指導。ランナーの身体に中村勘九郎が変貌できた理由を『いだてん』演出・井上剛に聞いた (1/2)

 1964年に東京オリンピックが開催されるまでを描いた、宮藤官九郎さん脚本によるNHK大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」。今夜3日(日)にはいよいよ第5回「雨ニモマケズ」が放送されます。

 第5回は、オリンピックへの参加選手を決める羽田の予選会を描いており、主人公の金栗四三が激走します。チーフ演出を務める井上剛さんを囲んだ合同インタビューでは、日本人初のマラソンランナーとしてオリンピックに出場した金栗を演じる中村勘九郎さんの役作りに関するエピソードが明かされました。

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[プロフィール]
井上剛(いのうえ・つよし)
『いだてん』でチーフ演出を務める。これまでに『あまちゃん』、『64(ロクヨン)』、『トットてれび』、『その街のこども』(のちに『その街のこども 劇場版』が映画作品として劇場公開された)、『クライマーズ・ハイ』、『ハゲタカ』など数々のヒット作を送り出している。大河ドラマの演出は、『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)以来2度目。
※写真は2018年の第1回完成試写会のもの。

●第5回「雨ニモマケズ」のあらすじ
高座に上がったほろ酔いの志ん生(ビートたけし)は、古典落語「芝浜」を語ると思いきや突然オリンピックの噺(はなし)を始める。時は明治44年、オリンピックへの参加選手を決める羽田の予選会。全国から来た健脚の学生たちに刺激を受け、審査員だった三島弥彦(生田斗真)は急きょ短距離走に参戦。一方、金栗四三(中村勘九郎)は、10里およそ40キロメートルという未体験の長さのマラソンに挑む。ライバルたちとの激しいデットヒートの先に、憧れの嘉納治五郎(役所広司)の待つゴールを目指す!

金哲彦さんがマラソン指導。金栗四三を作り上げる役作りとは

――第5話は、羽田で開催されたオリンピック予選会の話。第1話とリンクする部分も多いが、現場ではどのように撮影したのでしょう?

あれは難しかったですね。お金もスケジュールも大変なので、撮影に長い時間はかけられません。そこで2日くらいかけて、頭を混乱させながら第1話と第5話を並行して撮りました。第1話はマラソンランナーの帰りを待つ嘉納治五郎さんの視点から、第5話は走っている金栗四三さんの視点から撮っています。第3話くらいからストーリーの流れが見えてきて、第5話でひとつのピークを迎える構成です。皆さん、第1話を再び見返したくなると思います。

2人の視点から描き分けるという演出は、撮っていておもしろかった。脚本の宮藤官九郎さんらしい仕掛けです。スタッフと一緒になって、これは第1話用、これは第5話用、と分けていきました。ここまで見せよう、という範囲を考えつつ、頭の中が複雑になりながら。

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