インタビュー
2019年1月27日

天狗倶楽部(TNG)にとって「イタイ」「暑苦しい」は褒め言葉。『いだてん』チーフ演出・井上剛が振り返る (1/4)

 1964年に東京オリンピックが開催されるまでを描いた、宮藤官九郎さん脚本によるNHK大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」。かつて『あまちゃん』などの演出を担当し、今作品ではチーフ演出を務める井上剛さんを囲んだ合同インタビューが開催されました。第1回放送後の反響や、Twitterで話題になった天狗倶楽部に関するエピソードなど、撮影の裏側について語ってくれました。

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[プロフィール]
井上剛(いのうえ・つよし)
『いだてん』でチーフ演出を務める。これまでに『あまちゃん』、『64(ロクヨン)』、『トットてれび』、『その街のこども』(のちに『その街のこども 劇場版』が映画作品として劇場公開された)、『クライマーズ・ハイ』、『ハゲタカ』など数々のヒット作を送り出している。大河ドラマの演出は、『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)以来2度目。
※写真は2018年の第1回完成試写会のもの。

第1回の反響は?

――第1回の放送を終えて、周りからの反響はいかがですか?

現場ではずっと撮影が続いているので、まだスタッフ、キャスト、親戚、友だち、といった身近な人からしか感想を聞けていません。だから、悪態をつく人はいませんね(笑)。大河ドラマということで、いつも以上に期待されているのを感じています。視聴者が「あ、そうか、私たちも来年には東京オリンピックを迎えるんだな」と共感を持って見てもらえる作品にしていけたら。

――第1回の平均視聴率は15.5%でした。どう受け止めていますか?

多くの方に見ていただき、ありがたいという気持ちです。さらなる飛躍になれば、と思って、今日は一生懸命しゃべりに来ました(笑)。今回は珍しく、実家の母がおもしろいと言ってくれた。その理由を考えました。自分と近しい歴史のことなので、ご高齢の方にもおもしろく見ていただける内容なのではないか。

お子さん世代にも、興味を持って欲しいですね。天狗倶楽部の振り付けを真似してもらって。あとは幅広い世代の方に、落語、歌舞伎、そういったものにも改めて興味を持っていただけたら幸いです。

当時の資料映像を随所に使って工夫

――時代を行き来する複雑な台本でした。撮影にあたり、意識したことは?

例えば、古今亭志ん生を演じるビートたけしさん、その若かりし頃を演じる森山未來さんが同一人物なんですよ、と分かってもらえるように2人をワイプで会話させたり。テロップでの紹介も含めて、あの手この手でやっています。自分の中では、これでもテンポを落として撮っているつもりなんですが、それでもまだ速い、と言われることも(苦笑)。

――どんな想いで、第1回の撮影に取り掛かった?

宮藤官九郎さんとプロデューサーと一緒に、第0回のつもりでつくりました。まだ誰も見たことのない映像や豪華なキャストを、これでもか、とひけらかしたかった(笑)。その結果、いろいろなものがミックスされた第1回となりました。構成が複雑で、また登場人物が多いこともあり、魅せ方には工夫が必要でした。さまざまな映像を加工して、うまく本筋につなげることを意識してやっています。

――具体的には?

例えば、資料映像の使い方ですね。天狗倶楽部を登場させて、視聴者に「こんな人たち本当にいたの?」と思わせてから、資料映像を出して「本当にいたんです」というような見せ方。あの団体は、現代の感覚でいうサークルですよね。今回の大河ドラマは『スポーツはじめて物語』なわけですが、スポーツは、誰か応援する人がいないと成り立たない。ただ走っているだけになっちゃう。ああいう、応援団長みたいな人たちが出現したのも日本初だった。一見ふざけているようにしか見えないけれど、こういう活気のある人たちが歴史をつくってきたんですよ、と紹介する運びにしています。従来の大河ドラマとは違い、今回は『当時の資料映像が残っている時代劇』。そんな想いで撮影も進めています。

 
 
 
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