ライフスタイル
2018年9月26日

やっぱり、ランパン│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#16

 アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。

 今回は、甘糟さんの友人が展開するウェアブランド「Pandani(パンダーニ)」へ訪問。ランニングからサイクルまで展開し、ポップな見た目とユーザー目線から生み出された機能的なデザインが特徴です。久しぶりの再会で、昔話に花を咲かせつつ、ブランドのこだわりなどについて伺ってきました。

かわいいタイプからモードっぽいタイプまで

 先日、トレーニングのセッションをお願いしているトレーナーの方に、「甘糟さんのウエア、おしゃれですね」といわれました。素直にうれしい。ウエアは私にとって、もっとも大切なギアですからね。

 その時に着ていたのは「パンダーニ」のタイツとランパン。といっても、聞き慣れない方も多いことと思います。このブランドは大手のスポーツメーカーではなくて、個人でデザイン&生産を行なっています。「知る人ぞ知る」というより「おしゃれな人しか知らない」、それがパンダーニなのです。自分で着ていていうのもなんですが。

 なぜ私が知っている&着ているのかというと、これを作っているのが古い付き合いの友人だからなんです。パンダーニを手がける阿部ちひろさんのもう一つの顔はフォトグラファー。その昔、私の連載の写真を撮っていただいてました。ドライヴとクルマがテーマで、毎回毎回、そりゃあもう凝った写真をコスト度外視で撮影してくれました。交差点に同じ車種の色違いが8台走っているカットだとか、ハイブリット車を冷蔵庫に見立ててコンセントをつけて撮ってみたりだとか、阿部さんの頭の中のイメージを、写真を使って「描いている」ような感じ。あれはポップアートでした。

 だから、久しぶりの連絡で「今、ウエアのデザインをしているんだ」と聞いても、やっぱりそうか、と思ったのです。ランニングの、というところが少し意外でしたけれど。パンダーニはランニングとバイクのウエアのブランドです。

 青山のお店に遊びにいってきました。

 まず目を引くのは、入って右側の壁にずらりと飾られたランパンたち。ブランド名は「パンダ」とランパンをかけたもので、メインアイテムはもちろんランパンです。常に50種類の柄のランパンが揃います。

▲ポップなデザインが特徴のランパン

 その全てがとにかく凝りに凝っている。阿部さんらしいなあ。オリジナルの柄はパンダのイラスト入りだったり、阿部さんのお嬢さんが描いた絵だったり、かつて私の連載でロールスロイスの撮影の時に使用したイギリス国旗があしらわれたものだったり。かわいいタイプからモードっぽいタイプまで個性はさまざまです。生地は全てイタリア製。ロット数が少ないので皇居辺りで誰かとかぶっちゃうことはまずないでしょう。

 おしゃれ度が高いだけではなく、機能も追求して作られています。ランパンのポケットには並並ならぬ気配りを見つけました。前ポケットは、走りながらでも右手で左側の左手で右側のポケットの中身が取れるように計算されています。最新デザインのランパンは、後ろのポケットが三つ。真ん中のはスマホが入る。事務的なスマホホルダーを左腕に巻きつけなくてもいいんですよ。

▲パンダーニの阿部さんと

 阿部さんいわく、他のアイテムは抑えめでランパンを派手なものにするのがかっこいいんだとか。そう、それなの!

 ランニングウエアはカラーにカラーを合わせて楽しむスタイルがあるのは知っています。でも私は、普段グレーとか紺とか黒なんかの無彩色の服がほとんどなので、ランニングだからといって別人格のようにカラフルになるのは無理なわけ。だから、ランパンだけ振り切ったものにして気分転換するのは楽しいんですよね。

 トップスもおしゃれなものが多くて、フード付きのランニングシャツなんて、普段、ロングスカートに合わせて着ても良さそうです。ちょっとブラウジングしてね。

▲サイクルシャルでは珍しいボタンダウンシャツ(左)。メンズも展開(右)

 バイザーにも阿部さんのこだわりがありました。再度に切り込みが入っていて、サングラスを刺せるんです。マイ・ランニングコースは海岸線なので、風が強い日にはサングラスが吹き飛ばされてしまうことがたまにあります。このバイザーなら、そんな心配もなさそうです。

▲サングラスをホールドしてくれるサンバイザー

「コストがかかり過ぎちゃって、全然儲からないよ〜」

 そういって笑う阿部さん。洋服でも家具でも食べ物でもなんとなくそれっぽいものが手頃な値段で手にはいる昨今だからこそ、パンダーニにおけるある意味狂ったようなこだわりに価値があるんだと思います(これ、褒め言葉ですよ!)。モノそれ自体じゃなくて、その後ろにある物語や熱意や批評が作り出さざるを得なかったもの、といったらいいでしょうか。

 買い物の途中に出してくれたコーヒーが本当においしかった。ものを増やすのではなくて、好きなものを増やすことがきっと楽しいんだろうなあと痛感したのでした。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。9月21日、河出書房新社より新著『鎌倉の家』が刊行。

《取材協力》
Pandani(パンダーニ)青山
[営業時間]13:00〜18:00
※18:00以降の来店の際は事前の予約にて対応可能な場合もあり
[定休日]なし(不定休)
[住所]東京都渋谷区神宮前3-1-24 ソフトタウン青山101
[TEL&FAX]03-6434-0308
[公式サイト]http://pandani.jp/p/
[Web Shop]https://pandani.shop-pro.jp/

<Text:甘糟りり子/Photo:編集部>