インタビュー
2018年5月3日

リアルを描き続ける作品は「格闘家の夢」。総合格闘家・堀口恭司『グラップラー刃牙』【私のバイブル #4(後編)】 (1/2)

 超一流のアスリートも、小さい頃はマンガの主人公に憧れ、未来を夢見る少年少女でした。彼らはどのようなマンガに影響を受け、成長してきたのでしょうか。

 堀口恭司選手が語る格闘マンガの金字塔『グラップラー刃牙』。後編では、作品から学んだ強さや、現在格闘家になったからこそ想うことなどをお聞きしました。さらに「RIZIN.10」に向けた意気込みも語っています!

▼前編はこちら

絶対勝てないけど刃牙や独歩と戦ってみたい。総合格闘家・堀口恭司『グラップラー刃牙』【私のバイブル #4(前編)】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

堀口恭司にとっての「最強」

― 前編の最後に範馬勇次郎の名前が出ましたが、勇次郎は作中で“地上最強の生物”と称されていて、刃牙をはじめ登場人物の多くが「最強」を求めて奮闘しています。そこで堀口選手が考える「最強」とは、どんなものでしょうか?

人間社会での強さはまた別のものだと思いますが(笑)、戦いという視点で考えると、自分でいえばいまはRIZIN、総合格闘技で負けないことが最強に近いのかなと思います。

さらにいうと、自分はさっきも話しましたがいつもこんな感じで自然体ですが、中にはイキってる人もいるじゃないですか、オラついてるというか。そういうことじゃなくて、ふだんは至って普通でむしろ礼儀正しく、だけどいざやるとなったら強いよ、という、そういう部分を心がけているというのはありますね。

― 刃牙もふだん高校にいるときは学生服を着て大人しくしてて、でもいざ不良とかに絡まれて学生服脱ぐとヤバいみたいなところがありますね。

本当にそうなんですよ。ふだんから力んだり威嚇する必要はなくて、そのままで、楽に生きていればいいんです。それでそのままのテンションで試合ができればそれがいちばん強いと思います。

― 堀口選手のイメージする最強に近い格闘家というのは誰になるのでしょうか?

うーん、やっぱり全盛期のヒョードル※じゃないですかね? あれはすごかったですよね。結局本気を見せないままだったと思えるくらい。試合中も常に冷静というか平常心で、あの氷のような目つきで、あれはヤバかったですね。

― 最近復帰したジョルジュ・サン・ピエール(GSP)※とかはいかがですか? 一時期パウンド・フォー・パウンドでも名前があがっていましたが。

んー、なんというか、今のUFCっていうのは最強というよりも、UFCという1つの競技という感じがするんですよね。だからGSPも確かに強いんですけど、あくまでもそれはUFCの中であって、最強というとちょっと違うのかなと。

― 確かにUFCはどんどん洗練されてきて、選手も格闘家というよりもアスリートというイメージが強いかもしれません。

RIZINもUFCも自分の中ではそこまでやることに変わりはないですけど、UFCはより競技だなというイメージがありますね。それこそ刃牙の地下トーナメントみたいな、純粋にどっちが強いんだみたいな部分は刺激されないですよね。そこはRIZINの方がより日本的というか、刃牙を読んできたり、異種格闘技戦を見てきた日本のファンには合ってるのかな。

※注
◎エメリヤーエンコ・ヒョードル:ロシアの総合格闘家。元WAMMA世界ヘビー級王者。元PRIDEヘビー級王者
◎ジョルジュ・サン・ピエール:カナダの総合格闘家。元UFC世界ウェルター級王者。UFC史上4人目の二階級制覇王者

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