2017年10月17日

日本一過酷なフルマラソンと名高い「うるぎトライアルRUN」走ってきた(前編)

 数々のマラソン大会を走り抜いてきたベテランランナーの中には、「普通のレースでは物足りない」という方もいることでしょう。10月8日(日)に長野県南信州にある売木村で開催された「うるぎトライアルRUN」は、そんな方々の思いを満たしてくれるかもしれません。

 売木村といえば、以前にMELOSでも取り上げた場所。24時間走の国内記録ホルダーである重見選手が中心となって、ランニングを通じた村の活性化に取り組んでいます。では、果たしてどれほどに過酷で、どんなに魅力ある大会なのか。その全容を2回に分けてご紹介しましょう。まず今回は、“日本一過酷”と銘打ったそのコースについてご覧ください。

いきなり階段登りからスタート

 売木村およびコースは標高が高いため、当初は寒さ対策が必要なのではと思っていました。しかし天候に恵まれ、むしろ暑くなりそうな陽気。スタート時間が近づくと、次々に参加ランナーが会場へと集まってきます。暑さを予感してか、ハイドレーションやボトル等で水分を持って走った方が多いようでした。

 なお、本大会はエコにも配慮されており、エイドステーションでの水分補給には“マイカップ”の用意が必須。忘れた方には、会場で販売も行われていました。そして朝9:00、いよいよ大会がスタートします。


 走りはじめて1kmも経たないうちに現れたのが、歩きたくなるような階段。もしかしたら、いきなり歩いてしまった……、という方がいたかもしれません。私は序盤ということもあって駆け上りましたが、これから待ち構えている“過酷な”コースを予感させてくれました。

終わりの見えないアップダウンの連続

 日本一過酷なフルマラソンとは、いったいどういうことなのか。その秘密は、コース全体を通じたアップダウンの多さにあります。本大会はフルマラソンという距離にも関わらず、累積標高差が1,700m。例えばウルトラマラソンで過酷と呼ばれる「飛騨高山ウルトラマラソン」は、距離100kmに対して累積標高差は2,480m(第6回大会公式HPより)です。天候など含めて一概に比べられるものではありませんが、距離対累積標高差という点だけで見ると、その厳しさがイメージできるのではないでしょうか。

 コースのほとんどは峠道。舗装路ではあるものの、基本的に平地なしでアップダウンが続きます。しかもアップダウンは、その坂道がもの凄い斜度。気を抜いたら足を止めてしまいそうです。

 登りきったと思えば、今度は同じレベルの傾斜を一気に駆け下ります。最初こそ足が元気なので軽快に走れるのですが、下り坂では足が大きな衝撃を受けるため、後半になって辛くなった方は多かったでしょう。実際、ゴールまであと数kmという地点で、足を攣ってしまったというランナーに遭いました。こうした峠の昇り降りが、本大会では何度も繰り返されます。

 中には未舗装のダートコースも。写真は、大会当日のみ通ることのできる牧場です。足場が悪いためバランスが取りにくく、ゆっくりしたペースでも普通以上に疲労を感じました。まさに、売木村の自然を走って満喫できるコースといえるのではないでしょうか。

最後に待ち構えるトレイルコース

 なんども峠を超え、「もう登りたくない」とすら思わされた本大会。それでもゴールが近づくにつれて、少しずつ活力が蘇ってきます。残り数kmとなれば、遠目に売木村の集落が……。しかしラスト2kmで、とんでもないコースが待ち受けていました。

 それが、本格的なトレイルコース。直進すればゴールへ続く道のりを、あえて逸れて山へと入っていくのです。入口でつい笑ってしまうくらい、最後までランナーを楽しませてくれます。最後がトレイルというのは、走り終えてみれば実に“うるぎトライアルRUNらしい”と思えるコースでした。

 そして山を降りると、500mほど道路を走り抜けてゴール。数時間前にスタートした場所へと戻ってきました。これまで数々のマラソン大会を走ってきましたが、確かに“日本一過酷”なフルマラソン。ちなみに私は4時間03分08秒というタイムで第8位。フルマラソン経験者であれば、この順位とタイムからも、どれだけ厳しいコースなのかが窺い知れるはずです。

 「坂道は得意だ」「普通のコースじゃ物足りない」そんな思いをお持ちのランナーには、是非とも一度走って頂きたい大会。足自慢な皆さん、来年チャレンジしてみてはいかがでしょうか? 続けて次回、コースだけではない売木村ならではの魅力をご紹介します。

▼大会情報
うるぎトライアルRUN
http://www.urugi.jp/2017/04/108.html

後編はこちら

過酷なだけじゃない!フルマラソン「うるぎトライアルRUN」で、絶景と食事も楽しむ(後編) | 趣味, トレーニング×スポーツ『MELOS』

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

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<Text&Photo:三河賢文>