インタビュー
2018年5月4日

プロの道が具体的に見えてきたのは、高校2年、スカウトを受けてからでした。川崎フロンターレ谷口彰悟(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #12 (1/2)

 スポーツ界の第一線で活躍しているアスリートに、幼少期の習い事について訊く連載。自身の経験を振り返っていただき、当時の習い事がどのようにその後のプレーに活かされたか、今の自分にどう影響しているかを伺います。

 小学校のときにエレクトーン、習字、陸上を習っていた谷口彰悟選手。そのころの夢は「サッカー選手」でしたが、中学に入り変化が訪れたそうです。

▼前編はこちら

エレクトーンがイヤでイヤで......でも今思えば役に立っている。川崎フロンターレ谷口彰悟(前編)【子どもの頃こんな習い事してました #12】 | 子育て×スポーツ『MELOS』

成績が残せなくても腐らなかったことがよかった

――中学でも引き続き「熊本ユナイテッドSC」のジュニアユースに所属。活躍されていましたか?

実は、小学校のときは身長が大きいほうだったんですけど、中学に入ったら周りにどんどん追い越されてしまったんです。体格差によって、中学時代はサッカーの成績もあまりよくなかった。小学校のときは県選抜に選ばれていたんですが、中学2年生あたりで外れてしまったんです。周りがどんどん大きくなって、サッカーでも追い抜かれていって不安だったことをよく覚えています。

でも、そこで腐らずに自主練するなどして地道に続けていたことはよかった。サッカーを辞めようという選択肢はなかったですね。とにかく悔しくて、もう1回選ばれるくらいがんばろうという気持ちでした。

――そういうとき、親御さんはどういう言葉をかけていましたか。

「またがんばりなさい」くらいだったと思います。具体的にこうしたほうがいいといったことはなかった。サッカーに関しては、僕が自分で考えて自主的に練習も一生懸命やっていたので、両親が何か言うことはほとんどなかったですね。僕としても、言われなくてよかったと思います。

高校でプロのスカウトを受けたけれども大学へ

――子どものころの夢はサッカー選手ですか。

小さいときは漠然とサッカー選手になりたいと思っていました。でも、中学に進んで、周りの子たちの夢も変わってきた。このあいだまで一緒に「サッカー選手になろう」と言っていたやつが、中学に入ったら「公務員を目指す」と言ったり。まわりの現実的な考えにちょっと影響されて、僕もちゃんとした仕事を……と考えて体育の先生を目指そうと思いました。

プロを現実的に考えたのは、高校2年の終わりごろ。フロンターレのスカウトに「宮崎キャンプの練習に参加してみませんか」と言われて実際に参加してみたことがきっかけです。そこで初めてプロという道が具体的に見えて、自分はそこへ行ける位置にいるんだとわかりました。

――なにがなんでもサッカー選手の夢に向かっていくぞ、というわけではなかったんですね。

「なにがなんでもプロになりたい」という考えは、それまであまりありませんでした。高校に入ったら、サッカー選手権に出て全国大会に進んで優勝したいという思いが強く、それに向けて3年間がんばるという感じ。どうやったら試合に出られるか、どうやったら自分は勝てるかと常に考えていて、それでいっぱいいっぱいだったんです。先のことを考えるより、目の前のことに全力で取り組んでいたら、いつのまにか先につながっているという感じでした。

――高校時代にスカウトを受けたものの、大学進学を選びました。

高校を卒業してプロに入って給料をもらえるような生活にいきなり変わるということに、「それでいいのかな」という迷いが正直あった。もっと自立していろいろなことがわかってから、プロに入っても遅くはないんじゃないかという考えがどこかにあったし、親から「サッカーが終わってからのことも考えて」という話があり、大学に行くと親が安心すると思ったところもあって。いろいろなことを考えて筑波大学進学を決めました。選択は間違っていなかったと思います。

――中学のときに体育の先生を目指していましたが、教員免許は取りましたか?

高校の保健体育の教員免許を取りました。高校時代のサッカー部の平岡和徳先生が、サッカーの指導者としても、教育者としてもいい先生で感銘を受けました。こういう先生がたくさんいたら学校が楽しいだろうな、いう感じだったので、僕もこういう先生になりたいという思いで目指しました。

平岡先生の言葉はたくさん心に残っています。よく言っていたのは、僕の座右の銘にもなっている「人生、我以外皆師」。謙虚さを常に持って学ぶ心でいなさいといつも言われてました。心に響く言葉をたくさんおっしゃる先生で、生徒たちはみんな尊敬していると思います。

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