2017年6月15日

子どもの人間力があがる!? 全国初&渋谷区発のスポーツ子育て支援施設「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」に行ってみた<Vol.1>

 2017年4月1日、東京都渋谷区にオープンした「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」。この施設では「スポーツをもっと」をテーマに、子ども、保護者、指導者がともに育つ“共育”の場として、子ども向けのスポーツプログラムや保護者向けのセミナーを開催しています。どんな目的で創立され、どんなことが行なわれているのか、実際に「すぽっと」に行ってきました!

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スポーツを通じた子育てを研究する杉山芙沙子さんと渋谷区がタッグを組んだ、全国初の試み

▲杉山芙沙子さん

 「すぽっと」は、スポーツと幼児教育との関係を科学的に研究し続けている杉山芙沙子さんが代表を務める一般社団法人次世代SMILE協会が、渋谷区から依頼を受けてオープンしました。今や子育て支援に力を入れているところは多いですが、民間ではなく、行政がこうした取り組みをするのは全国初&渋谷区発の試みということで注目を集めています。

 「すぽっと」の魅力は、本物のスポーツを軸に子どもと親がともに学び、ともに成長できるような有益な情報を発信するセミナーやスポーツプログラムです。参加対象の2〜8歳の子どもたちが体験するのは、元プロテニスプレイヤー杉山愛さんの母でありコーチでもある杉山代表が開発した『スマイルシップスポーツプログラム』。毎月10本程度、適した年齢に分かれて実施されているほか、体操の金メダリストである内村航平選手の母・内村周子さんが指導する体操教室も大好評を得ています。

 また、保護者向けにアスリートペアレンツによる講演や、子育てに係る食育、医学セミナー、ファイナンシャルセミナーなども行なわれています。

「杉山代表の『トップアスリートの幼児期における両親の教育方針』という論文が幼児教育研究のきっかけになりましたが、ここ「すぽっと」ではあくまでもスポーツを楽しんでもらい、スポーツが脳の発達に大事で素敵なことだと知ってもらうきっかけ作りが目的です。本物のスポーツに触れて、子ども自身から『これがやりたい』というのがあって初めて専門のスクールに行ってもらい、生涯スポーツを楽しむきっかけになれば良いと思っています」

 と話すのは、施設長の穂積盛子さん。「すぽっと」の原点は、スポーツの能力やスキルをより高く、より強く、より早くではなく、スポーツをより楽しんで行なうことで自己肯定感の強い次世代の子どもたちを育てること。スポーツをツールにして、どんなことにもチャレンジして継続できる力、人を讃える力、観察力など、子どもたちが社会に出たときに役に立つ力を育てていくことなのです。

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スマイルシップスポーツプログラムで子どもがスポーツ好きになる!

 『スマイルシップスポーツプログラム』は、ガラス張りの明るいプチアリーナで実施されます。この日は小学校1、2年生の男女8名が参加し、45分間のプログラムが行われました。

 まずは10分程度のウォーミングアップ。この日はコーンを立てるチームと倒すチームに分かれ、30秒間の対戦。最終的にどちらのコーンが多いかを競いました。続いて布製のキッズラダーを使用し、1コマずつ進むゲーム。まっすぐ進むのは比較的うまくできる子が多かったものの、横向きになるとちょっと難しかったみたいです。なかにはつまずいてしまう子もいて、応援団にも熱が入ります。

 終始、歓声をあげながらプレイに集中する子どもたち。プレイヤーだけでなく待機中に応援するメンバーも真剣そのものです。これは一見、簡単そうに見えますが、足の動きや上半身の姿勢など細部まで気をつけて丁寧に行なうことが目的とされている遊びだそうです。

 次は2人1組になって、サッカーのようにボールをキックしてパスする競技。日によって内容は変わるのですが、本物の道具に触れてスポーツの楽しさを実感してもらう目的があるそうです。最初はまっすぐ蹴ることができなかった子も上手なパートナーのコツをつかんであっという間に上達していきました。

 最後に全員が輪になって今日の感想を話します。生き生きとした目を見れば、彼らがいかに充実していたかがわかります。単に「楽しかった」「おもしろかった」だけでなく、自分の言葉で具体的に発言しているのも印象的でした。これは楽しくスポーツをすると脳が活性化し、言葉がスムーズに出てくるという化学的な根拠に基づいた現象のひとつなのだそうです。

 子どもたちの初対面でもすぐに打ち解けるコミュニケーション力、苦手なことも少しずつ克服できる勘の良さや学習能力、集中力に感動。思わず「いや〜、子どもって本当にスゴイんですね……」と、子どもたちの様子を見守っていたお母さんに筆者は声をかけました。

「うちの子はシャイで初回はほとんど何も言えませんでしたが、今は学校以外のお友だちも増えて楽しそうです。下の2人の子どもも連れてくるんですけど、お姉ちゃんと一緒にやりたがっています」参加できない弟、妹にはお絵かきセットで気を引くという努力をしていました。また、別のひとりのお母さんは、このように話してくれました。

「今日で4回目なんですけど、子どもが楽しいから行きたいというので応募しました。小学生になると授業中の子どもの様子が見られないから、私もここで子どもの得手不得手を発見したり。ここでやっていた遊びを家でも楽しんでいます。それから、指導員の先生がどんな風に子どもたちに声をかけているのかも見ていて、子育ての参考にしています」

 確かに失敗したとき、逆にうまくできたとき、どう声をかけたら子どもにとっていいのか迷いますよね。「すぽっと」の場合、参加者に年齢の幅もあるし、運動能力の差もある。現場では実際にどんな声かけをしているのか、指導員の杉山舞さんに聞いてみました。

▲指導員の杉山舞さん

「スポーツがうまくできるなど、ただ単にスキルが素晴らしいことだけにフォーカスしていません。上手にできる子も上手にできない子も他人と比較するのではなく、前回より少しでも上達することで達成感を味わい、自信に繋げることが大事です。また『この前よりすごくいいよ!』と事実を伝えることで子どもたちは『自分を見てくれている』と分かり、安心して楽しんでもらえますし、最後のサークルタイムでも『~~が上手くできた』と自分を評価することができます。それが重要だと思いますので、子どもたちには絶対評価することを大切にしています」

プログラムやセミナーの参加方法は?

 応募は公式HPから申し込む完全予約制。渋谷区に在住、在勤、在学の方が優先ですが、他の地域からの参加も可能です。なんと、参加費は無料ということで競争率はかなり高いです。

 募集情報の開示は、約1ヶ月前だそうですが、「ほぼ開示した当日にいっぱいになってしまうことが多いです。実際のところ、リピーターの方も増えているのですが、初心者限定にしている日もあるのでぜひこまめにHPをご覧になってください」(施設長の穂積さん)とのこと。

 興味があるならぜひ、初参加の方が参加できるプログラムを狙ってみてはどうでしょうか?

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【施設情報】
渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと
[住所]東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-11 アグリスクエア新宿1F
[TEL]03-5341-4177
[開館時間]10:00〜18:00
[休館日]月曜
[公式サイト]http://shibuya-spot.jp

<Text:パンチ広沢+アート・サプライ/Photo:玉井幹郎>