ライフスタイル
2021年11月10日

子供の運動神経を鍛える「体幹遊び」とは

 子どもの体力低下問題。以前と比べて改善傾向にはあるものの、継続的な課題となっています。しかも昔とは異なり、運動ができる子・できない子の「二極化」が顕著に進んでいるようです。今回は、いま流行の体幹理論を応用して、子どもの未来の運動能力を高める遊びや指導を考えていきます。

体幹とは

 巷で流行している体幹トレーニング。体幹とは腕・足以外の胴体部分を指します。

 現在知られているような体幹トレーニングは、当たりの強さやバランス力の強化などを目的に、早ければ中学、だいたいの場合は高校生から大人になってから体験します。しかしこの体幹トレーニングは、幼児や小学生にこそ行ってほしいトレーニングです。

 なぜなら、体幹トレーニングが将来の運動能力向上につながるから。そのためには、大人が行う体幹トレーニングではなく、幼児や小学生の発育発達に合わせた“体幹遊び”がおすすめです。

なぜ体幹は大事なのか

 小さな子どもは腕力や脚力がありません。そのため、胴体をうまく利用しながら身体を動かすことを覚えます。実は、これがとても大切です。その重要性について、一本の棒を例にとって分かりやすく説明してみましょう。

 下図左のように、支点と反対側の先端を持って10cm動かしたとします。当然ですが、先端の動きは10cmです。しかし右側のように、より支点に近い位置を持って10cm動かしたらどうでしょうか。先端ではメートル単位で動き、大きく速い動きとなって表れます。

図は筆者作成

 この考え方を、子どもの身体(足)に当てはめてみましょう。支点を足の付け根、先端を足先と考えます。足先に意識を持って動かすのと、足の付け根に意識を持って動かすのと、何が違うか分かるでしょうか。

 結果として、足の付け根に意識を持った方が大きく動かせるはずです。そして成長期が訪れて手足が伸びると、さらに威力が増すようになります。

「付け根」を動かす意識を身につける

 このように、腕や足を使うのではなく、腕や足の付け根から動かす意識を小さい頃から身に付けて胴体を動かせるようにしておくとよいでしょう。腕力や脚力がついてくる頃には、もう遅くなってしまいます。

 子どもが小さい頃は、運動がうまくできなくても構いません。それより、身体(胴体)をいっぱい使って遊んでほしいものです。

 胴体を利用した動きが身についていれば、後の運動能力に繋がるでしょう。つまり小さい頃には、体幹を鍛えるトレーニングではなく、腕や足の付け根を意識した動きができる“体幹遊び”を仕向けておくことが大切なのです。

どのような体幹遊びをすればよいか

おすすめは「アスレチック」

 どのような遊びをさせればよいのでしょうか。おすすめは「アスレチック」です。手を伸ばし、足を高く上げ、胴体をうまく使いながら乗り越えるようになります。

 とはいえ、アスレチックに毎回行くのは大変です。そんなときは、総合遊具なども良いでしょう。ひとつの動作だけを繰り返すのではなく、体全体を使っていろいろな動きができるものを選んでください。

室内なら「親子遊び」や「布団遊び」

 外に行けない日は親子で組体操をしたり、木登りならぬ親登りしたりという親子遊びもおすすめです。ぜひ体を貸してあげてください。また、布団を敷いてマット代わりにし、布団遊びをするのもよいでしょう。

 疲れても休まず走り回っている子がいますが、問題ありません。腕力や脚力から疲労していくため、疲れても走り回っているような子は、より胴体を使うようになります。

環境だけ整えて自由にたくさん遊ばせる

 大人目線で「できないから手伝ってあげよう」とすると、このような体幹を使った動きの工夫まで考えなくなってしまいます。ぜひ環境を整えてやり、自由にたくさん遊ばせてあげてください。ただし、自由と放任は違います。放任して危険な目に合わないよう、きちんと気をつけてあげることが大切です。

[プロフィール]
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。小・中・大学でバスケを指導し、独創的理論・論理的指導で育成する。体力テスト最低水準校で県優勝、無名選手達で東海1部にスピード昇格。最高は全国準優勝。
4月より群馬医療福祉大学助教から旭川大学短期大学部准教授となり、バスケで培った理論を応用して幼児体育・健康の研究を行う。またパーソナルストレッチやスポーツスタッキング、部活動改革も取り組んでいる。
[HP] https://mt-a.jimdo.com

<Text:赤堀達也/Photo:Getty Images>