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2020年8月24日

子育てに悩む親におすすめ。“天才”と呼ばれるトップアスリートの育て方『天才は親がつくる』│スポーツがしたくなる今月の1冊

 よく「子育てに正解はない」と言われます。子育て中であれば、このことを実感されている方は多いことでしょう。しかしよく話を聞いてみると、大人になって何か大きな成果を挙げる人には、子育ての目線でも共通事項があるかもしれません。

 今回ご紹介する『天才は親がつくる』(著者:吉井妙子/文藝春秋)には、各種競技で活躍するトップアスリートがどのような子ども時代を過ごしたのかが綴られています。いかにして、“天才”と呼ばれるトップアスリートが生まれてきたのか。運動に取り組むお子さんの子育てに悩まれている方にとっては、素晴らしいバイブルとなることでしょう。

親へのインタビューに基づくノンフィクション

 本著に登場するトップアスリートは、松坂大輔やイチロー、丸山茂樹、武双山など。競技種目はさまざまですが、その競技をよく知らない方ですら名前を耳にしたことのある、名だたるメンバーが並びます。彼・彼女らがどのような子ども時代を過ごしてきたのかは、子育て中であるか否かに関わらず興味深いのではないでしょうか。

 子ども時代といえば、大人になるとその記憶は曖昧になってしまいます。また、どのような教育方針や思いで育てられてきたのかなど、受け手側である本人にはあまり分からない点が多いはずです。しかし本著では、それらの情報が細かく鮮明に記されています。

 その理由は、トップアスリート本人ではなく、その親へのインタビューをもとに書かれたものだから。環境や教育に向けた考え方、実際の取り組み、あるいは成長した姿を見た親としての気持ちに至るまで、まるでインタビューの現場に居合わせたかのようにイメージすることができます。

 子どものことを語る際、親の言葉には強い思いが込められます。本著ではその声を一部そのまま引用することにより、包み隠さない本音を受け取ることのできる構成です。同じ親として、または子育ての先輩として、1つ1つの言葉に納得や驚きを得られることでしょう。

子育てを見直すキッカケになる

 取り上げられているトップアスリートたちは、勝負する競技がそれぞれ異なります。しかしおもしろいのは、それでもよく比較してみると、共通項が見えてくることです。ネタバレになってしまうので多くをお伝えできないことが残念ですが、本著で知った教育方法について、私もさっそくいくつか自身の子どもたちに向けて取り組み始めました。

 また、中にはすでに行っていたことも含まれているなど、自分の子育てを見直すキッカケにもなっています。思いと行動が相反していないか。自分の育て方が間違っていないか。こうした不安・疑問は、子育てしているとつい頭をよぎるものです。天才とまで言わなくとも、できるだけ立派な大人に育って欲しい。そういった親の思いに対して、本著はバイブルのように助言を与えてくれるでしょう。

 10名のトップアスリートについて、子どもの頃の“育て方”やその背景について記された本著。もちろん、全く同じ育て方をすれば、同じような結果を残せるとは限りません。しかしその土壌を知ることは、子育てするうえで大きなヒントとなるはずです。

 本著ではトップアスリートにフォーカスしていますが、子育てという意味では、スポーツに限らず共通して学ぶべき点が多いように感じます。「大きく成長してほしい」「夢を叶えられる人になってほしい」などと望むのであれば、ぜひ一度、本著をご覧ください。

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>