インタビュー
2017年7月3日

ガンバ大阪時代に味わった“甘さ”があったから。SOU嵜本晋輔氏(後編)【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #1】

 プロサッカー選手の道を諦め、家業であるリサイクルショップでの修行を経て、引退後7年で独立を果たした嵜本晋輔代表。後編では、株式会社SOUが発展した後のエピソードや、今、まさに決断を迫られている海外進出について紹介していきます。

《前編》
・【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #1】Jリーガーから年商200億超の社長に。SOU嵜本晋輔氏(前編)

--今では、年商200億円を超える企業の代表になり、嵜本代表はさらに上のビジョンを見据えていますよね。そのモチベーションの源はなんでしょう。

やっぱり過去の経験でしょう。21歳のときにガンバ大阪から戦力外通告を受けるわけですが、そういうことっておそらく、普通の企業で働いていても味わうことはできないと思います。でも、プロのスポーツ選手というのは、都度結果を出さないと生き残れません。つまり、プロである期間は一日一日が勝負というか、どれだけ結果に寄与出来る準備ができるかを試されていたにも関わらず、私にはそれができなかったと。

そういう点において非常に甘かったと思い知らされましたし、何よりその経験があったからこそ、現在の立場になっても油断や慢心を持たないのだと思っています。つまり、僕は代表なのでクビになることはありませんが、その立場に奢らず、常に危機感を持って臨んでいるということです。ガンバ大阪での一件がなければ、ひょっとしたら今のような環境を手に入れたとき、しょっちゅう海外へ遊びに行ってしまうような代表者になっていたかもしれませんね。

--それだけ仕事が楽しいというのもあるんでしょうね。では、企業の代表になって良かったと思うことはなんですか。

最近よく感じるのが、自分たちが好きなことや、やりたいことをやった上で、いろんな方面から注目されるようになると、より厳しいリクエストをもらえるというか、お客様はもちろん従業員からも「もっとこういう会社にして欲しい」という要望が来るわけですよね。もっと高いレベルを要求されることがとてもうれしく思うし、そういうコメントをくれる方々と出会えているという現状にもすごく喜びを感じます。

--ちなみに、サッカー選手は経営者に向いているのではないか? と思ったりしますが、共通点はありますか。

特に中盤(MF/ミッドフィルダー)の選手というのは、前列や後列にも気を配る必要があります。かつ、瞬間ごとのプレーに適切な判断を下した上で動かなければならない。まあ司令塔の役割ですよね。それって経営にも似たことが言えて、今どこにパスを出すべきなのか? と悩むのと同じように、都度判断を迫られるんです。

ポジションにもよるとは思いますけどね。もちろん、FW(フォワード)の選手も攻め手という意味では、経営者になってもある部分は優れているかもしれないし、私の場合は中盤だったので、総合的に広く見渡す能力があったのかもしれません。

▶無料体験もあり! 全国のサッカー・フットサル教室を探す

目指すのはリユース事業の日本代表

--なるほど、ではこれまでのお話を簡潔にまとめた上で次に移ります。まず、サッカーを辞めた時の決断、そして東京に出る際の決断と、これまで大きな決断を何度も迫られたと思いますが、現在はどんな決断を迫られていますか。

そうですね、今は本格的に海外へ出ようかについて考えています。まあすでに去年、海外に子会社を構えていて、今年も香港でオークションを行ったりもしていますが、まだまだ本格的に動くのはこれからなので。

我々のビジネスモデルは、一般のお客様から仕入れた商品を、一般のお客様へ提供するというより、企業向け、つまり我々の同業に近い方に対して提供するというものです。それをこれまでは日本国内だけで行っていたのですが、今後は海外の場で広げてみようかというのを模索しているところですね。

海外の件もそうですし、Jリーグを辞めた時もそうですが、これまで数々の大きな決断をしてきて思うのは、正解はわかりませんが、その時自分がベストだという判断をしたら、あとはその判断を正しくするために努力することが大事ということです。例えば、サッカー選手を続けていたら、またJ1でプレーできたかもしれませんし、日本代表にもなれたかもしれませんが、私はその選択をしませんでした。しかし、今こうして企業の代表としてお仕事させていただけているのは、ある意味、その時下した判断が正しかったと。そう思えるように、また周りの人にも思ってもらえるように日々緊張感を持ち、努力を続けています。

失敗も含めて自身が経験してきたことを踏まえて考えれば、自ずと正しい決断はできると思います。しかし、どうにもそれを躊躇する方もいますよね。そういう方は往々にして決断できない理由を一生懸命探しますが、それはどうかと思います。私の場合は、難しい決断だとしてもやると決めたら必ず決断します。例えば、あえて他社ができないことを選ぶというか、無かったところに道を作るというか、そういった意思決定が必要だと考えます。

--では最後の今後の目標を教えて下さい。

サッカーで日本代表になれなかったので、やはりブランドリユース企業で日本代表になりたいですね。それと、一緒に働いてくれている社員に対して、もう少しいろいろ考えられたらと思っています。同じ会社で働き続ける理由というのは、仕事が楽しいというのはもちろんだと思いますが、何より会社が好きなんだと思うんです。しかし、これまで私は本当に会社を好きになってもらえるような環境づくりができたかな? というのがいささか疑問でして、そこを叶えたいと思っていますね。

▶無料体験もあり! 全国のサッカー・フットサル教室を探す

《前編を読む》
・【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #1】Jリーガーから年商200億超の社長に。SOU嵜本晋輔氏(前編)

【プロフィール】
嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)
1982年4月14日生まれ。大阪府出身。
元Jリーガーにして、現在はブランド買取専門店「なんぼや」、予約もできる買取専門店「BRAND CONCIER(ブランドコンシェル)」、BtoBオークション「STAR BUYERS AUCTION(スターバイヤーズオークション)」、などを運営している株式会社SOUの代表取締役社長を務める

<Text:上野慎治郎(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>