インタビュー
フィットネス
2018年2月28日

身体を“伸ばす”メンテナンスの重要性。NY発の「ヤムナ」を体験してきた┃連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#7

 アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。

 今回は、スポーツ愛好家にとって無視できない身体のメンテナンスについて。甘糟さんが以前から気になっていたというボディケア・メソッド「ヤムナ」を体験するため、都内の専用スタジオを訪れました。

丁寧にボディケアをすることで心身ともに軽くなった

 筋トレを日課としていた時期もありました。追い込めるだけ追い込んで、くたくたになってから形だけ筋を伸ばして、ときどきマッサージ。局地的に痛みが出たら、鍼に駆け込んだりもしました(こわがりなので、超苦手ですけどね)。メンテナンスは他人の手に任せっぱなしだったのです。

 最近、考えが変わりつつあります。自分の身体のことはできるだけ自分の手で、無理やり追い込まない、使うことより伸ばすことを優先する、というように。使わないかもしれない筋肉を増やすのに躍起になるよりは、体幹の性能をよりあげたいと考えるようになりました。

 そこで、前々から興味があった「ヤムナボディローリング」のセッションを受けてきました。いろいろな大きさのボールを使って身体の細部までストレッチするメソッドです。

 提唱者のヤムナ・ゼイクはNYのいわゆる「カリスマ・トレーナー」。ググればわかりますが、白髪のロングヘアに強い目力の持ち主です。ミーハーな私は、彼女のルックスだけでこのメソッドに興味を持ちました。だって、かっこいいんだもん。若々しいのだけれど、きちんと老けているところがすてきです。わかっていただけますでしょうか、このニュアンス。

▲ヤムナ・ゼイクさん

 さて、スタジオでの体験の前に、ウエアについて書かせてください。前回のランニングの回(「代々木公園で白戸太朗さんと“再会ラン”」)を読んだ友人知人から「あれ? ランパン履いてるじゃない」といわれてしまいました。代々木公園を一緒に走った講談社の加藤さんにも同じ指摘をされました。そう、皆さん、第1回のこの「もう隠さない。って、何を?」を覚えていてくださったのです。いやいや、屋外で「タイツ一丁」は私にはまだ無理ですって。いや、おそらくずっと、無理。

 でも、今回のヤナム・スタジオでは、ちゃんと「一丁」ですよ。

 本題に入りましょう。ヤナム・ボールは4種類。直径がそれぞれ10、15、23、25センチで、サイズによって色が違います。どれもバランスボールのように大きなものではなく、どれもバランスボールよりも硬い。効かす部位や目的で使い分けます。ボールの硬さで刺激するわけです。

 まずはパール色のボールを使い、マットにうつ伏せになって胸あたりから始めたのですが、これが思っていた以上に痛い。それだけ筋肉が固まっているということなんでしょうね。場所は肩甲骨のちょうど表側。原稿を書いている間なんかも、肩甲骨は意識的にほぐそうとしますけれど、表面となると、なかなか意識がいきません。今回、胸の部分がこんなに凝っているのかと驚きました。

 シルバーのボールで腰回り、一番小さなブラックは2つ使って、ふくらはぎや太もも裏をほぐします。ふくらはぎは明らかに「痛っ!」かったです。

 トレーナーの鈴木智さんは、社会人ラグビーなどのチームトレーナーでした。常に選手のケアにいいものやメソッドはないかと探していて、その中でヤムナ・ボールに出会ったそうです。

 正直なところ、長い髪をお団子にしてアッシュカラーのウエアで決めたおしゃれな女子が先生として現れるのかと思っていたら、ガチな男性トレーナーで意外でした。その鈴木さんに、ときどきジョギングをすること、かつてテニスで靭帯を炒めて右足首に人工靭帯を装着するオペを受けていることなどを話しながらのセッション。途中、真剣に言われちゃいました。

「走ったりとか、それなりに運動しているんなら、手遅れにならないうちに、自分に合ったケアを覚えないとまずいですよ。年々、元に戻らなくなるんだから」

 あせる私……。

▲トレーナーの鈴木さん(写真左)

 健康を保つために適度な運動は必要ですが、スポーツってたいていはどれも身体の一部分を極端に酷使します。自分の身体をギアと考えれば、メンテナンスは必要不可欠ですよね。そういえば、イチロー選手は試合や練習の前、ストレッチに2時間近くかけるらしい。

 鈴木トレーナーの言葉で、さらに驚いたのは、仰向けになってよくやる腹筋運動。あれも、身体にいいことばかりでないというではありませんか。仰向けになって膝を立てて、腕を頭の後ろで組んで、膝におでこをくっける、あの定番中の定番の腹筋です。身体を縮めるのが良くないらしい。言われてみれば、あの腹筋をたくさんやって腰が痛くなったことは何度かありました。

「日常で自然に身体の一部分を伸ばす動作ってまずないんですね。運動においてもだいたい似たようなものです。だから、意識的に伸ばすことを生活に取り入れないと、どんどん固まっていってしまいます」

 ヤムナ・ボールを使って70分、可能な限り身体を伸ばしてきました。ヨガと同じ鼻呼吸を意識するように、とのこと。固まっていたところが伸びると、身体の感覚だけではなくて、心も軽くなった気がします。多分、これ、気がするだけではなくて、実際に心もほどかれているのだと思います。

 後日、主に脚をほぐすのに使う一番小さな黒いボールを購入。これを挟んで正座して、スポーツ中継を見たり(平昌オリンピックは黒いボールとともに記憶されています)、寝っ転がった時には太もも裏や腰裏に入れてみたり、全くのオリジナルですが、左右の首の付け根の下に入れてボールの上で上半身を移動させたりしています。痛い!とまではいかない、程よい刺激がいいんですよね。

 心も身体もストレッチして、ほどくことを心がけようと思いました。

《関連サイト》
・ヤムナジャパン
http://yamunajapan.com/

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。

<Text:甘糟りり子/Photo:編集部>